2000年にスタートした介護保険制度も、我々にとって馴染み深いものとなりました。原則1割の自己負担のもとで、介護サービスを受けられる仕組みは、とてもありがたいものですよね。
多くの人が利用するようになった介護サービスですが、「仕組みがちょっとややこしいな…」と感じる人もいるのではないでしょうか。
施設サービスは、定額制のためそれほど難しい仕組みではありませんが、在宅サービスとなると、「支給限度額」という言葉に頭を悩ませる人がいます。
そこで今回は、「支給限度額」とはそもそもどういったものなのか、要介護度別の支給限度額はいくらなのか、どのようなサービスが含まれるのか、などを解説していきます。
ちょっとややこしい「区分支給限度基準額(限度額)」
居宅サービス及び地域密着型サービスについて、要介護度別に設けられた制約のことです。
決められた範囲(金額)のなかで、介護サービスを選択・組み合わせることができます。
居住系(施設系)はサービスを組み合わせることがないのに対し、居宅系(在宅)は、訪問・通所介護など、さまざまなサービスを組み合わせられるため、利用に歯止めが効きにくいです。
「できるだけ多くの介護サービスを取り入れよう」「こんなサービスも取り入れた方が良いのでは?」と、必要のないサービスまで取り入れ、高額な月額となってしまう可能性があります。
そのため、要介護度別にいくつかの典型的なケースを想定し、ケースごとに設定された、標準的に必要とされる介護サービスの組み合わせ利用例を勘案して、月の基準額(限度額)を定めているのです。
要介護度別の支給限度額
さいしょに、それぞれの要介護度が、どのような状態かを整理しておきましょう。「要支援1」が一番軽度であり、要介護5が一番重度です。
要介護度別の状態
<要支援1>
在宅生活のなかで、食事・入浴・排泄などの日常生活動作を一人でおこなえる。
しかし、買い物や金銭・服薬管理などの手段的日常生活動作には、一部見守りや介助を要する。
<要支援2>
要支援1の状態+下肢筋力低下・歩行状態の不安定さなどがみられる。
今後、介護が必要となる可能性がある人。
<要介護1>
要支援2と比べると、さらなる下肢筋力の低下や歩行の不安定さがある。
理解力の低下などもみられるが、自立度は高い。
<要介護2>
日常生活動作にも一部介助を要し、認知症の症状などもみられる。
<要介護3>
自立歩行が難しく、車椅子を使用したり、生活全般に介助を要したりする状態。
<要介護4>
常時介護を要する。
(全面的に)意思疎通や会話はできるが、著しく理解力などは低下している。
<要介護5>
寝たきりの状態や常時介護を要する状態。
意思疎通も難しい。
支給限度額(月単位)
- 要支援1…5万320円
- 要支援2…10万5,310円
- 要介護1…16万7,650円
- 要介護2…19万7,050円
- 要介護3…27万480円
- 要介護4…30万9,380円
- 要介護5…36万2,170円
利用者は、支給限度額内であれば、原則1割の自己負担となります(要支援1の場合は5,032円、要介護5の場合は36,217円)。
ただし、所得などによっては2割・3割の自己負担となることもあるので、注意が必要です。支給限度額を超えて介護サービスを利用するときは、超過分を全額自己負担しなければなりません。
区分支給限度額に「含まれるサービス」と「含まれないサービス」
含まれるサービス
対象となるのは、訪問介護、訪問看護、通所介護、福祉用具貸与、短期入所生活介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護(短期利用の場合のみ)などです。
在宅で介護を受ける際に必要なサービスは、基本的に含まれますが、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)などは、短期利用(ショートステイ)の場合のみなので、注意してください。
含まれないサービス
対象とならないのは、認知症対応型共同生活介護(短期利用を除く)、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、介護療養型医療施設などです。
居住系(施設系)は、介護サービスを組み合わせることがほとんどなく、歯止めが効かなくなることが少ないため、対象となりません。
限度額を超えたときの「高額介護サービス費」とは
高額介護サービス費とは?
自己負担(支給限度額超過分を含む)が、月々の負担上限を超えたとき、超過分が払い戻される制度です。
上限を超えた際は、自治体から支給申請書が送られてくるため、申請書に記入や押印をして、郵送するなどしましょう。
後日、指定口座に振り込まれ、超過分が戻ってくるため、申請はした方が良いといえるでしょう。
自己負担の上限はどのくらい?(月単位)
- 現役並み所得者に相当する人がいる世帯の人…4万4,400円
- 世帯の誰かが市区町村民税を課税されている人…4万4,400円
- 世帯の全員が市区町村民税を課税されていない人…2万4,600円(世帯)
- 前年の合計所得金額と公的年金収入額の合計が年間80万円以下の人など…2万4,600円(世帯)、1万5,000円(個人)
- 生活保護を受給している人など…1万5,000円(個人)
※「世帯」は、住民基本台帳上の世帯員で、介護サービスを利用した方全員の負担合計の上限額。「個人」は、介護サービスを利用した本人の負担上限額。
介護保険をかしこく活用するために
支給限度額は「制約」ではありますが、介護サービスを適正な価格で組み合わせるための、「基準」となるものです。
介護サービスの種類や、本当に必要なサポートを、家族が見極めるのはとても難しいことでしょう。そのため、あれもこれもと介護サービスを取り入れ、高額な月額となってしまう可能性があります。
支給限度額があれば、月額の基準がわかるため、家族は参考にすることができるのです。
みなさんも、在宅サービスを取り入れる際は、支給限度額を基準とし、なるべく範囲内に収まるように、適切なサービスを組み合わせることをおすすめします。
参考資料
すべて厚生労働省公表
- 「区分支給限度基準額について(改定後)」(平成31年資料)
- 「区分支給限度基準額」(平成29年資料)
- 「高額介護サービス費について(改定後)」
鈴木 咲季
