派遣社員という究極のジョブ型社員

ここまで書いてきて、最後にちゃぶ台返し的に話を進めます。「日本企業の雇用システムはメンバーシップ型である」という前提への疑問です。実のところ、これは正社員から見た労働市場観という気がします。日本には非正規雇用や派遣社員も数多く存在します。派遣社員はジョブ型雇用の社員です。

労働者派遣法が施行されたのが1986年。バブル崩壊後、派遣社員は「雇用の調整弁」として機能してきた一方、日本のジョブ型雇用の先駆けとも言えるのではないでしょうか。

日本の派遣社員の「使われ方」は企業によって非常に異なります。定型的な作業に従事することも多いのですが、正社員/ゼネラリストのアシスタントとしてスタートして「彼女(派遣社員)なしには、ウチの課は回らんよ」というようなケースも存在します。

これは部分最適化が得意な日本固有の現象ですが、実はそこにヒントがある気がします。正社員でジョブ型雇用に関心のある人にとって、参照モデルは身近にいる“優秀な派遣社員"なのかもしれません。

もちろん現在の正社員 vs. 派遣社員の構造が最適解とは到底、考えられません。ただ未来のカタチとしては、正社員と派遣社員という境界が徐々にとりはらわれ、その中間域として「ジョブ型雇用」が成立するというのが理想的なロードマップなのではないのでしょうか。

榎本 洋