ジョブ型雇用の世界はバラ色か

ではジョブ型雇用の世界はバラ色なのでしょうか。欧州の事例を中心にみていきましょう。欧州のジョブ型労働は、ジョブとジョブの間の敷居が高く、キャリアアップはなかなか容易ではないという現実もあります。

ジョブ型労働は、業務内のパーツをジョブに標準化して切り出すわけですから、そこで働く人々は定型化された作業を繰り返すことが通常となります。日本のように新卒で正社員として入社し、事務作業からスタートとして、ある一定の年齢に達すれば管理職となるようなキャリアパスは通常、用意されていません。

欧州の管理職は、大学院で経営学等の専門的知識を身につけた一部のエリートが、キャリアを“管理職の卵"としてスタートさせるのが通常です。

当然、ジョブ型ワーカーでは年収も20代で300万円、50代になっても350万円位というケースも珍しくありません。定型的な仕事を繰り返すジョブ型ワーカーとスーパーエリート。「欧米には日本人の知らない2つの世界がある」とする論評も存在します。

EUの近年の労働市場における推奨モデルは北欧発の「フレキシキュリティ」です。これは高い雇用流動性を実現しながら、同時に手厚い失業保障や職業訓練を前提とするモデルです。つまりジョブ型雇用・転職を前提とした社会システムが構築されているわけです。