これまで見てきたように、効果的なワクチンが広範囲に提供される見通しを背景に、新型コロナウイルスの脅威が後退し、循環的な成長への期待が高まっているが、コロナ禍による経済的不均衡と需給ギャップという後遺症は長期化する可能性が高い。それは、労働市場の回復の遅れという形で顕在化してくると見られている。

具体的な可能性としては、一部における雇用の恒久的な喪失、全国的な雇用創出の低迷や労働市場参加率(生産年齢人口に対する労働人口の割合)の低下などが挙げられる。それらは家計収入および企業収益への打撃、金融部門におけるクレジット・デフォルトや資産内容の悪化リスクの増大、さらに財政制約および債務の持続可能性への懸念の高まりを招く恐れがある。

多くの短期的なリスクがある中で、政府は様々な構造改革策を打ち出してきた。こうした取り組みは、インドがより魅力的な投資先およびグローバルな製造拠点となるうえで不可欠とされる長期的な改革と合致しており、持続的な経済成長の確固とした基礎となりうる。構造改革の実施状況とそれらがもたらす社会・経済的な効果が、今後数年のインドの成長軌道を大きく左右することは言うまでもない。

株式市場

2020年3月下旬に反転し上昇続く、12月も過去最高値更新

インド株式市場は、2020年2月下旬から3月半ばにかけて、新型コロナウイルスの感染拡大を背景とした世界的な株安を受けて急落したが、その後反転し、上昇を続けている。12月には史上最高値を更新した(2020年12月31日現在)。

直近の相場上昇の背景には、海外では、新型コロナワクチンの普及への期待、米国大統領選挙での民主党バイデン氏の勝利、国内では、景気指標の改善、良好な企業決算がある。

HSBC投信の株式運用戦略

インド株式市場は、当面は世界および国内の新型コロナウイルスの感染状況、ワクチンの開発・普及の状況に強く影響を受けることが考えられる。

当社は中長期的にインド株式市場に対する強気の見方を維持している。インド経済の成長ポテンシャルは高く、構造改革の進展から、長期的に成長率は高まると見られている。与党インド人民党(BJP)が安定した政治基盤のもとで高成長・構造改革路線を継続すると見込まれることも、株式市場にとり強力なサポート要因となる。

インド株式の運用では、持続的な収益成長性を有しながらバリュエーションに割安感のある銘柄を選別する。業種別には金融と不動産をオーバーウェイトとし、エネルギーをアンダーウェイトとしている。またインフラ関連銘柄は、モディ政権が推進するインフラ投資計画の恩恵を受けると見込まれる。