実務的には、全国民に納税を猶予して資金繰を支援した上で、収入が激減している事業者には後日の納税を免除する、といった工夫が必要でしょう。誰が困っているのかを見定めてから支援するのでは、時間も手間もかかりますので、対応策が必要です。
そこで、取り急ぎ全員に納税を猶予しておいて、後日提出された納税申告書と過去の納税申告書を見比べて支援の対象を決めれば良い、というわけです。この点については拙稿『政府は「納税期限の無条件猶予」で中小企業の資金繰り支援を』をご参照いただければ幸いです。
減税をすることで、無用な景気変動が4回も生じる
新型コロナ不況への対策として消費税を引き下げるということは、たとえば2年の時限立法となるのでしょう。そうなると、困ったことが生じます。
消費税率が下がる前には「買い控え」が発生し、下がった後には反動増が発生します。2年後に減税が終了する前には通常の消費税率引き上げ時と同様に買い急ぎが発生し、終了後には反動減が発生します。つまり、2年強の間に不必要な景気の波乱が4回も引き起こされるわけです。
そこまでして消費税率を引き下げるくらいであれば、所得税減税や10万円一律交付の方がまだマシです。本当に必要な人に恩恵が及びにくいという点は同じですが、不必要な景気の波乱は発生しませんから。