また、ISが正式に犯行声明を出していない事件を含め、11月に入っても不穏な動きが続いている。たとえば、以下のような具体的事件が報告されている。

  • バグダッド南郊の国際空港近くにある軍施設で武装集団による襲撃事件が発生し、11人が殺害された。
  • 北部キルクーク県で路上に停車していた軍用車両の近くで爆弾が突然爆発し、2人が死亡、6人が負傷した。
  • 北部サラーフッディーン県では石油施設がロケット弾で攻撃され、現地の村人2人が斬首して殺害された。
  • 首都バグダッドの国際空港ではIS幹部の男が逮捕され、北部モスルでもISと共に活動していた女が逮捕された。

中東に石油を依存する日本経済へのリスク

ISが以前のような姿に戻る可能性はゼロに近い。しかし、イラク軍の訓練や支援に当たってきた米軍のプレゼンスが縮小することで、対テロ作戦に従事する治安当局の能力面や技術面に影響が出てくる可能性もある。

また、何より新型コロナウイルスの感染拡大による社会混乱で、これまでISの掃討作戦に従事してきた警察や軍が感染対策に時間を割かれるようになり、それによってISが自由に活動できる空間が広がる恐れもある。

日本は石油の9割近くを中東に依存している。サウジアラビアやUAE、カタールほど多くはないが、イラクからも多くの石油を輸入している。幸いにもイラクでもテロ事件は減少傾向にあるが、引き続き注意すべき不穏が情勢が続いている。

和田 大樹