コロナ以前、2019年3月までの1年間に、GDPに占める海外からの旅行者の国内消費額の割合は約4.4%でした。政府はこれを国にとって重要な財源として捉えています。しかし、無期限で続いている国境封鎖で海外旅行者からの収入が途絶えた今、観光業者の頼みの綱は国内在住者のほかいないのです。

観光局も国内旅行者向けにキャンペーンを展開中

政府が運営するコロナ情報専門のウェブサイト内には、観光に触れているページがあります。観光についてのトップページにいくと、「シー・ヨア・オウン・バックヤード(自分の家の裏庭を覗いてみて)」という言葉に迎えられ、ニュージーランド政府観光局のウェブサイトが紹介されています。

観光局は通常、「100%ピュア・ニュージーランド」を標語に、海外からのビジター向けに観光プロモ―ションを行う組織です。しかし、現在のターゲットは国内旅行者。

在住者向けのキャッチフレーズは「ドゥ・サムシング・ニュー(何か新しいことをやろう)」で、国内旅行を計画する人に「バケット・リスト」、つまり「死ぬまでにやっておきたいこと」と称し、数々の旅行プランを紹介しています。

アートから自然までの多岐にわたる分野を網羅し、観光スポットやそれらを見に出かける際に参考にしたい旅行プランが並んでいます。

地方にある32の観光局も各々、国内在住者向けに地元を売り込んでいます。たとえば、筆者が住む北島西岸部に位置するタラナキ地方のキャッチフレーズは「ジャスト・アラウンド・ザ・コーナー(角を曲がったところ:すぐそこに)」。

標高2518メートルのタラナキ山からタスマン海に面する黒砂のビーチまで車で1時間もかからずに移動でき、山と海の魅力を同日のうちに楽しめることを売り込んでいます。