いよいよ師走に入り、テレビでは年賀状に関するCMが流れる季節となりました。年賀はがきの引き受け開始は12月15日(土)からですが、今年は特にコロナ禍もあって、会社などでも年賀状や賀詞交歓会を中止するという動きもみられ、多くの人が「年賀状どうするか問題」に悩んでいるようです。

日本郵政が2020年9月に発表した資料によると、2020年用年賀はがき(2019年に発行)の発行枚数は計24億4090万枚だったとのこと。また、2021年用年賀はがき(2020年発行)の当初の発行枚数は19億4198万枚と発表されています。あくまで「当初の数字」ですが、年賀状の発行枚数は、ピークだった2003年の約44億6000万枚と比べると、実に半分以下にまで減少しています。

このように、年賀状を書く人が、数字の上でも減ってきている中で、「終活年賀状」というものが話題となっています。いったいこれはどんなものでしょうか?

「終活年賀状」って何?

終活年賀状とは、「今年限りで年賀状を辞退する」という旨の文章を書いた年賀状のことです。多くの方がご存じのように、「終活」とは、「自分の人生の終わりに向けての活動」のこと。もともと、そうした終活の一環、身辺整理の一つとして「年賀状を出すのをやめる」ということも行われていたようです。

そうした中、ここ最近になって、「最後の年賀状宣言」を行うことが「終活年賀状」「年賀状じまい」などと呼ばれるようになりました。

実際のところ、「終活の一環としての『もう年賀状を出さない』というお知らせ」や「終活していることを伝える年賀状」というよりも、ほとんどは単に「年賀状を出すのは今年で最後だという通知」です。なので、ネーミングとしては、「終活年賀状」よりも、「年賀状じまい」(あるいは「年賀状終活」など)のほうが適切なようにも思われます。

年賀状業者が「終活年賀状の文例」を出すのは自殺行為!?

それはともかく、出すのをそっとやめるだけでなく、あえて「年賀状をやめます」と宣言した年賀状を出すことには、たとえば次のような理由があります。

「これまでの年賀状のやり取りへのお礼はきちんと言いたい」
「出さない理由を理解してもらいたい」
「急に年賀状を出さないことで心配をかけたくない」

このように、それまでの送り相手に対して、なるべく誠実であろうという心遣いから生まれたもののようです。

面白いのは、そうした「年賀状を今年いっぱいでやめたい人」向けの文例集が、年賀状の外注業者のサイトに載っていたりすること。ある意味で「自殺行為」とも言えるのですが、ヤケになっているのか、あるいは「最期を迎える客」からもきっちり稼いでおこうということなのでしょうか。

終活と関係ない世代にも広がる理由

こうした文例をまとめた記事は、ほかにもネット上に数多くみられます。そうしたことからも、一定のニーズがあることもうかがえます。また、高齢になった親の年賀状を一緒に書いている人が、「親の分までつくるのに疲れた」と終活年賀状を選択することもあるといいます。

しかし、終活年賀状はいまや高齢者にとどまらず、40代のような、終活とはあまり縁のない世代にまで広がっています。その背景には、どんな理由があるでしょうか?

「このあたりで一度、人間関係を整理したい」
「義理や惰性で年賀状を書いていたけど、面倒なのでやめたい」

といった理由から、「そもそも年賀状を書くのをやめたい」とずっと思っていた人は、思った以上に多いのかもしれません。

一方で、「自分は出していないのに、知り合いから年賀状が送られてくると申し訳なくなる」「相手に気を遣わせたくない」という気持ちもあることから、あらためて「年賀状の終了宣言」を行うことを選ぶ人が多いと考えられます。

あなたは賛成? それとも反対?

ネットでは、こうした年賀状の「終活」に対して、

「惰性で書いてる程度ならやめても構わないだろ」
「合理的だし自分もそうしたい」
「不謹慎かもしれないけどコロナ禍は終活年賀状のよい契機だと思う」

と賛同する声がある一方で、

「正月早々、縁切り状をもらうのは不快」
「フェードアウトのほうがいい」
「とりあえずもらった人が傷つかない書き方にしてくれ」
「寂しい気持ちになるので、せめて寒中見舞いとして送ってほしい」

とあまりよく思わない人も多くいます。確かに、誠実な気持ちで送られたものだとしても、そういう文面を受け取るのが嬉しいかといえば、微妙なところではありますね……。

SNSやメールにその座を明け渡すのか?

SNSなどコミュニケーションのツールがますます発達する中で、普段から知り合いの近況を見ていたり、たまにメールをやり取りしていたりすることも多い今となっては、「日ごろから連絡を取っている仲のいい人へは、年賀状の必要性を感じない」という人もいます。

また、「年賀状を書くことに追われず、年末をゆったりと過ごしたい」「気持ちの問題だから形式は問わないはず」と、年賀状よりも手軽なSNSやメールで年始の挨拶をする人が増えていることは間違いありません。

高齢化だけでなく、さまざまな理由から行われている年賀状の「終活」。今後もさらに広がりを見せていくのかもしれません。今回の年賀状、みなさんはどうされますか?

クロスメディア・パブリッシング