介護する側にとって「たいせつな」こととは

身体的な変化に対して

身体に触れることが多くなる終末期は、その人にとって最も少ない時間、方法、量を考慮し、無理のない介護をします。

身体介護は一つ一つの場面を通して、身体と心に慰めや励ましを伝えるチャンスです。丁寧な言葉と笑顔、ゆっくりとした動作、優しいまなざしで接しましょう。

介護量が多くなると、介護者が中心となって世話に追われている錯覚に陥りがちですが、あくまで、「その人」が中心であることを忘れてはいけません。

心理的な変化に対して

短い時間でも部屋を訪ねて声をかける、ケアが終わった後もすぐに居室から去らず、2、3分でも会話をする、手や足のマッサージをする、丁寧に髪をとかすなど、気持ちを伝える機会を意図的に設けていきます。

「暮らしを共にする人」として、寄り添うことが、今を分かち合うことになるからです。

残りの時間は減っていきますが、嘆くのではなく、人が生きる真理(きまり)として受け止めましょう。

行動の変化に対して

終末期は、医療ではなく「人」が付き添って、「人」の支えで、その人を幸せにする時期です。そばに気を払ってくれる人がいると、人の脳は十分に反応することがわかっています。

かぼちゃの煮物、花の香り、歌、子どものときに遊んだ紙風船、家族と旅行した時の写真など、その人の好みや喜び、心地よさになるものを居室に持ち込んで、一緒に楽しみ合いましょう。

さいごに

「終末期」の介護は、プロであっても戸惑いや不安があるものです。

最期のときをともに過ごすというのは、とても重要な意味を持つため、身体や心理・行動などのさまざまな変化を知っておくことが大切になります。

いま、「終末期の介護」に携わっている人だけでなく、今後携わる可能性がある人にも、介護の仕方や関わり方を知って頂く機会になればと思います。

鈴木 咲季