コロナ禍の影響が一因になっていることは明白

詳細な内容(年代別など)は厚労省による分析結果を待たなければなりませんが、増加に転じた時期を勘案しても、コロナ禍の影響が最大要因である可能性は非常に高いと考えられます。

ここから先は筆者の推測になりますが、コロナ禍で職を失い収入の見込みが無くなった非正規社員の女性(男性も)が、給付金を使い果たして前途に絶望した可能性もあります。特に、扶養家族を抱えた世帯主の場合、その心のうちは察するに余りあります。

仮に、筆者の推測が正しいとすれば、いわゆるコロナ第3波襲来の影響が本格化した今後は、さらに自殺者数が増加する懸念が拭えません。

例年は少ない年末年始は要注意、命のセーフティーネット強化を

もちろん、自殺者増加の原因はコロナ禍だけではないでしょう。今年目立ったのは、コロナ禍による経済的困窮とは直接関係のなさそうな著名人や芸能人の自殺が相次いだことです。今でも自殺した理由が不明なままの方も多いようですが、自ら命を絶つには何らかの理由はあったはずです。

ただ、そうした潜在的な自殺要因が何らかの形で炙り出されたとすれば、コロナ禍による不安感や閉塞感がその一因だった可能性もあるでしょう。

統計的に見れば、年末年始は自殺者が少ない傾向にありますが(3月と5月に多い)、今年は例年とは違います。年末年始に自殺者増加のニュースが出ないよう祈るとともに、政府や自治体にはセーフティーネットの一層の強化を望みます。

葛西 裕一