資産は貯めた後の使い方が難しい…目的と手段を混同しないためには?

資産形成と資産活用の違い

「資産活用」という言葉はまだ馴染みがないかもしれません。「資産形成」とどう違うのか、「資産運用」とはどう違うのか、といった点が少しわかるだけでも、お金との向き合い方に広がりが出てくると思います。

「資産形成」という言葉はよく使われるようになりました。

つみたてNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)が注目され、多くの金融機関やファイナンシャル・プランナーの人たちが積立投資の有効性を伝えるようになり、若い人を中心に資産を創り上げるための積立投資を始める機運も出てきました。

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これは資産を創るという意味で「資産形成」と呼ぶものです。英語では「Accumulation」と呼んでいます。

これに対し「資産活用」はすでに出来上がった資産をどう活用するかという視点になります。「資産形成」が終わった退職者のお金との向き合い方といってもいいでしょう。

英語では、上記の「Accumulation」に対して、資産を引き出す意味で「Decumulation」という言葉を使っています。

海外でも比較的新しい視点ですが、日本ではまだ資産の引き出しに関する議論は始まったばかりです。これからいろいろな考え方が提供され、具体的な金融サービスが広がっていくことになるでしょう。

山登りと下山は不可分

お金との向き合い方を山登りに例えると、「資産形成」が山を登ることで、「資産活用」は山を下ることといってもいいでしょう。

一般に登山では上ることよりも、いかに安全に下りるかの方が難しいといわれます。また山の頂上に着いてから下り方を考えるといった無謀なことはせず、下るルートの確認も含めて登山の計画を行います。

同様に、「資産形成」はそもそも「資産活用」の考え方を明確にしたうえで、考えるべきものだとも言えます。超高齢社会で、退職後の期間が長くなり「資産寿命」が強く意識されるようになって、より一層、両者の不可分なつながりがわかるようになってきました。

資産運用は手段、資産活用や資産形成は目的

「資産運用」との違いも理解しておく必要があります。

「資産活用」は「資産形成」と同様にお金との向き合い方の視点では“目的”といえるものです。たとえば、「資産形成」であれば「退職までに2000万円の資産を創り上げる」とか、資産活用であれば「持っている資産で退職後30年間の生活費を確保する」といったものでしょう。

そのために株式や投資信託を使った「資産運用」や、銀行預金だけを使った「資産形成」や「資産活用」をすることもあるでしょう。その視点に立つと、「資産運用」は、「資産形成」や「資産活用」という“目的”を達成するための“手段”と位置付けることができます。

「資産運用」が“手段”だとすると、投資対象の価格変動の大きさは”手段“の持つリスクだといえます。

それがあたかも「資産形成」や「資産活用」という“目的”のリスクだと誤解すると、却って「資産形成」や「資産活用」という“目的”をとん挫させかねません。“目的”と“手段”を混同しないことも重要だといえます。

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フィデリティ・インスティテュート 退職・投資教育研究所 所長 野尻 哲史

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執筆者
野尻 哲史
  • 野尻 哲史
  • フィデリティ・インスティテュート 退職・投資教育研究所 所長

国内外の証券会社調査部を経て、2007年より現職。アンケート調査をもとに個人投資家の資産運用に関するアドバイスや、投資教育に関する行動経済学の観点からの意見を多く発表している。日本証券アナリスト協会検定会員、証券経済学会・生活経済学会・日本FP学会・行動経済学会会員。著書には、『老後難民 50代夫婦の生き残り術』、『日本人の4割が老後準備資金0円』(講談社+α新書)や『貯蓄ゼロから始める安心投資で安定生活』(明治書院)などがある。調査分析などは専用のHP、資産運用NAVIを参照