こう覚悟を決めたとたん、犬たちは「なんだ、つまらない」という顔をして、もと来た道を引き返して行ったのです。ほっとしてへたり込みそうになりましたが、何とか玄関までたどり着き、一件落着となりました。

ずいぶん前のことなので、犬種などは覚えていません。でもはっきり覚えているのは、登録済みを示すタグ付きの首輪を着けていなかったことでした。

犬の登録とマイクロチップは、飼い主の義務

昨年初めの時点で、ニュージーランド国内で登録済みの犬の数は全国で56万匹を超えています。登録は、犬が生後3カ月になった時点で、飼い主が住む地方自治体で行います。これはマイクロチップの埋め込みとともに、犬の飼い主に義務づけられています。

では、登録料はどの程度か、人口も犬の数も最も多いオークランド市を例に挙げてみましょう。オークランドでは7月1日から翌年の6月30日までを1年間と考えます。

去勢済みのペット犬の場合、早めに(8月2日まで)支払えば106NZドル(約7600円)で、通常では140NZドル(約1万円)です。妥当な金額と筆者は考える一方で、「たかが登録に100NZドル以上?」と登録しない人もいるようです。

登録された犬には特別なタグが与えられ、首輪に付けていなくてはなりません。筆者を取り囲んだ犬は首輪すらしていなかったので、未登録だったに違いありません。タグは年によって色が違うので、一目で現行のものか、古いものか見分けがつきます。

もし未登録で生後3カ月以上の犬を飼っていた場合は、罰金300NZドル(約2万2000円)が科せられます。また裁判で有罪判決が下った場合は、3000NZドル(約22万円)以下とはいえ、大きな額の罰金が待っています。

なお、ニュージーランドを代表する科学雑誌、『NZメディカルジャーナル』の2019年5月号に掲載された研究報告書では、2004~2014年までの10年間に、犬にかまれてけがを負い、入院しなくてはならなかった人の数は4958人に及んだそうです。単純計算すると、1年に約500人です。