「死後離婚」という言葉をご存じでしょうか。
「パートナーの死後に離婚ってできるの?」となんて思う人もいるかもしれませんね。正式な名称は「姻族関係終了届」といいます。配偶者の死後に提出し、姻族との関係を終了するその性格から、「死後離婚」なんて呼ばれることがあります。
「婚姻関係終了届」の件数は10年ほど前には1,900件前後でしたが、近年急激に増加しています。下の表をご覧ください。その件数は2017年度にピークとなり、4,800件を突破しています。
【参考】
「戸籍調査(2018年・2019年度)種類別 届出事件数(姻族関係終了届)」法務省
「死後離婚」ってどういうこと?
夫婦の一方が死亡すると配偶者との婚姻関係は終了します。ところが、配偶者の血族との姻族関係は、手続きをしない限りそのまま続きます。ここでいう姻族には配偶者の実父母や兄弟などが含まれ、民法上では3親等以内の姻族が「親族」とみなされます。
配偶者の死後に姻族関係を終わらせるためには、「姻族関係終了届」を自分の本籍地か所在地の市区町村役所に提出しなくてはなりません。
「死後離婚」を選ぶ理由
「義理の家族と折り合いが悪い」「経済面での援助や介護などから解放されたい」といった事情がある場合、その気持ちを表明する意味合いで「姻族関係終了届」の提出を選ぶ人が増えていると考えられます。
「死後離婚」という言葉には、「姻族との関係をスッパリ断ち切りたい」という強い気持ちが込められているのかもしれません。
【参考】
「姻族関係終了届」大阪市
相続・遺族年金など「経済的なデメリット」は発生しない
「姻族関係終了届」には提出期限がありません。届け出にあたって姻族の同意を得る必要もなく、姻族関係が終了したことが先方に通知されるようなこともありません。「姻族関係終了届」を提出した後も、亡くなった配偶者の相続人としての地位や遺族年金の受給権は維持されます。
ただし、「姻族関係終了届」を出すことによって、元姻族との関係が悪化する可能性は低くありません。関係が良好であれば受けられたはずの支援が受けられなくなるおそれもあります。
また、夫婦に子どもがいる場合、その子どもは姻族にとって直系血族となるため、縁は切れません。義理の親の介護が我が子にかかってくる可能性もあります。「姻族関係終了届」を出すと2度と姻族には戻れないため、慎重に検討する必要があるでしょう。