40代、老後のために今からできること

ここで公益財団法人生命保険文化センターが実施した「令和元年度 生活保障に関する調査」をみてみましょう。この調査によると、夫婦2人が老後を過ごすために必要となってくる最低日常生活費について「20~25万円未満」と答えている人が多く、平均して22.1万円という結果が出ています。しかしこれはあくまでもギリギリの生活費であり、別の質問ではゆとりある老後生活を送るためにはさらに月14.0万円必要だということが分かります。

上記のモデルケースで考えた場合、経済成長率にもよりますが、最低日常生活分の22万円はおおよそ年金でまかなえるとしても、ゆとりある老後生活のための月14万円は貯蓄から崩していくことになります。となると、65歳から20年生きると考えたとき、単純計算で3,360万円の貯蓄が必要になるわけです。もちろんそこまで贅沢はしないかもしれませんが、老後2,000万円といわれる理由が分かってきますよね。

40代で現在負債も抱え、実質貯蓄がほぼ0、むしろマイナスになっている世帯も多いかと思います。しかしながら、上記のことを考えるとやはり今から老後に向けて貯蓄を始めていく必要が大いにあるということが分かってくるでしょう。もちろんコツコツと貯めていくのも一つの手ですが、節税をしながら資産運用ができる、iDeCoやNISAに目を向けてみることもおすすめです。特にiDeCoは所得控除の対象となっており、投資した金額に応じて所得税等が軽減されるという特徴をもっており、仕事をしている人にとっては大きな魅力のある制度です。

そしてもう一つ、老後の労働についても今からしっかりと検討しておくことも重要です。2025年4月には65歳定年制がすべての会社で義務化され、また2021年4月には70歳までの就業機会確保が企業の努力義務として課されることとなっています。人生100年時代といわれ、高齢者の雇用促進が重要視されている現代社会において、年金受給開始時期だからといって年金頼みにするのではなく、体力があるうちはしっかり働くということも検討していくべきでしょう。

40代、まだまだ先のことだと思っているといつの間にか老後はやってきます。その時のために、できる限り早く準備を始め、ゆとりある老後生活を送れるよう資産形成や老後の労働について考えていきましょう。

貯蓄とは
総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。

【参照】
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]」(令和元年)
総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2019年(令和元年)平均結果-(二人以上の世帯)8-5世帯主の年齢階級別
厚生労働省「将来の公的年金の財政見通し(財政検証)
公益財団法人生命保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査

多田 秋