今後の見通し

安定した「キャリア」分野を拡張

介護人材の不足は今後も続く見込みで、2025年には245万人の需要に対し供給が211万人と、34万人ものギャップがあると試算されています。そのため、キャリア分野は今後も安定して業績を伸ばすと考えられます。さらなる拡大へ向けて、転職だけでなく他業界からの新規就業者を増やすための教育情報サービスの強化や、人材紹介の対象職種を増やすなどの成長シナリオを描いています。

第二の柱となるか「カイポケ」事業

介護事業者分野では、クラウド型経営支援ソフト「カイポケ」の導入事業者数が2009年に全国で約1000カ所、14年に約1万1000カ所、直近の20年には2万7000カ所以上(いずれも4月時点)と安定した伸びを見せています。

介護施設の増設は高齢化する日本社会にとって急務であることから、目立つ競合が不在のなか「カイポケ」の成長可能性は大きいとみてよいでしょう。サブスクリプションサービスなので顧客を囲い込める強みもあります。現在の売上高はキャリア分野の6分の1程度ですが、成長次第では主力事業になるかもしれません。

まとめ

エス・エム・エスは高齢化の波に乗って成長してきました。人材紹介サービスは仕組み自体の目新しさはありませんが、超高齢社会という時代背景を的確につかんだ事業内容からみて見通しは明るいと言えます。「カイポケ」も複雑な介護保健の制度変更などに機敏に対応し、広告・PR戦略を的確に展開していくことで認知度を高めていけば、主力事業に育つかもしれません。安定した成長はしばらく続くと思われます。

【参考資料】
株式会社エス・エム・エス 2021年3月期 第1四半期 決算短信〔日本基準〕(連結)
株式会社エス・エム・エス 2021年3月期 第1四半期 決算および会社説明資料
株式会社エス・エム・エス 2020年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)
株式会社エス・エム・エス 2019年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)
株式会社エス・エム・エスHP
「カイポケ」HP
令和元年度 介護労働実態調査」(公益財団法人 介護労働安定センター)

山口 伸