インドではほとんどの農家は、農産品の大部分を州政府管轄下の卸売市場で、政府による保証価格で売却する。卸売市場は農家(通常は大規模農家)と中間取引業者で構成される農産品流通委員会によって運営されている。中間取引業者は農産品の販売促進、保管、輸送を担うほか、必要な場合は農家向け金融もアレンジする。

可決された法案に含まれている改革のいくつかは、多くの州ですでに実践されており、法改正が進めばそうした流れが全国的に広まるのは必至であろう。

人口に占める割合が大きい農業従事者は選挙対策上重視をする必要があることから、モディ政権は卸売市場と農産品の最低価格制度の維持を約束した。しかし、卸売市場がしっかりと根付き、活況を呈している複数の州の関係者たちはモディ政権の公約を疑問視している。政府がやるべきことは、法案を改正して、農家を自由市場の乱高下から守るための施策を盛り込むこと、との声が根強いのは確かである。

農業改革が新法案どおりに進むかは今後の成り行き次第だが、そうした改革が農家の自由市場へのより良いアクセスにつながるとすれば、インド農業に著しい変化が起きる可能性がある。しかし、現状は、インフラの未整備、サプライチェーンの遅れ、低水準の農業生産性など大きな課題は手つかずのままだ。

これらの課題の解決策の一つとしては、民間資本の農業部門への投入を促進し、農業技術のイノベーションを加速させることが考えられる。しかし、農業投資を意味のある水準まで引き上げるためにも、農業部門のさらなる改革が必要である。

インドにおける農業への民間投資は低水準で推移しているのが実情である(下図参照)。農家を民間企業から守るために導入されている農地活用に関する厳しい法律や関連規制を含む現行の法的枠組みが民間投資拡大へのネックとなっている。