薬をのみ、少しでも長く生きることができても、クマちゃん自身の「クオリティ・オブ・ライフ(QOL)」は上がらないとご夫婦ともに考えるようになりました。QOLの向上が見込めないのに、高額な薬を処方してもらう意味はどこにあるのだろう…と疑問にも感じました。そしてご夫婦は安楽死を選択したのです。

ちなみに安楽死にかかる費用は全国共通というわけではなく、獣医さんによってまちまちです。

ご夫婦が行かれた獣医さんではありませんが、例を挙げると猫が220NZドル(約1万5600円)、小型犬(体重1~14キロ)が240NZドル(約1万7000円)、大型犬(15~40キロ)が260NZドル(約1万8400円)です。40キロ以上の特に大きな犬は通常の大型犬の費用に20NZドル(約1400円)が加算されます。

敬意を払い、痛みは最低限に

安楽死を行う側である獣医さんも、それを軽はずみに勧めているわけでも、いい加減に処置を施すわけでもありません。

対象となる動物に対し、敬意を持ち、できる限り痛みがなく、苦しまないよう安楽死を行うよう、全国の獣医師を代表する会員組織、ニュージーランド・ベテリナリー・アソシエーション(NZVA)で決められています。動物福祉の法律、「アニマル・ウェルフェア・アクト 1999」に基づいた規則です。

NZVAの規定では、安楽死のほかにどのような選択肢があるのかを説明し、納得がいかない飼い主は他でセカンドオピニオンを求めることができます。最終的に、飼い主が記入したインフォームド・コンセントを受け取り、獣医さんは初めて当該の動物に対し、安楽死を行うことが許されるのです。