金融緩和の効果は限定的

金融緩和は、美人投票である資産価格には効くことがありますが、実体経済に対してはあまり有効ではありません。景気が悪い時に金利を下げても、工場の稼働率が低ければ新しく工場を建てる企業は少ないからです。ましてゼロ金利下の金融緩和は実体経済にはほとんど効かないと考えて良いでしょう。

金融緩和によって世の中に資金が出回り、インフレになる、と言っていた人もいましたが、世の中に資金は出回りませんでした。世の中に出回っている資金の量であるマネーストックはそれほど増えなかったのです。従って当然に、インフレにもなりませんでした。

デフレは止まりましたが、それは貨幣的な現象ではなく、労働力不足で賃金が上昇したこと等によるものと言えるでしょう。

結果としての貢献は大きかった

上記のように、個々具体的な経路での景気回復効果は限定的だったようですが、全体としてみれば「景気は気から」ということで、アベノミクスが景気を回復させた効果は小さくなかったと思われます。

「総理と日銀総裁は自信満々だし、株価もドルも値上がりしているし、世の中に資金が出回ると言われているし、景気はきっと良くなるのだろう」と考えた人が多かったとすれば、それが企業行動や消費行動等々を積極化させて景気にプラスに作用したことは十分に考えられるからです。