2019年に金融庁の「老後2,000万円問題」が話題となりました。この報告書により、二人暮らしの夫婦世帯の生活費は公的年金だけでは大幅に不足することが指摘されています。では、高齢者世帯ではこの2,000万円の資産を所有できているのでしょうか。また、貯蓄を増やしたい世帯が資産形成をしていくコツはどこにあるのでしょうか。

貯めている世帯との比較から考えていきましょう。

2,000万円を貯めている高齢者世帯はどれくらいいる?

まず、高齢者世帯の貯蓄額について見ていきましょう。総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)‐2019年(令和元年)平均結果‐(二人以上の世帯)」の調査結果によると、高齢者世帯の貯蓄額は平均で2,000万円をクリアしていることが分かります。

《平均貯蓄額と負債額》

  • 二人以上世帯の平均  貯蓄現在高:1,755万円
  • 60~69歳の世帯 貯蓄現在高:2,330万円
  • 70歳以上の世帯 貯蓄現在高:2,253万円

60代以上の高齢者世帯では、全体平均よりも貯蓄額は500万円ほど多くなり、平均で2,000万円をクリアしていることが分かります。また、60代の貯蓄2,000万円以上の世帯数は、抽出率調整済実数で53万4,000世帯で、60代世帯全体(132万6,000世帯)の4割ほど。

(ここでいう「世帯数分布(抽出率調整)」とは、「層ごとに抽出率が異なるので,抽出率の逆数に比例した調整係数と労働力調査による比推定比を集計世帯に乗じて得た世帯数を1万分比で表章したもの」となっています。)

70歳以上の貯蓄2,000万円以上世帯数は72万世帯(抽出率調整済実数)で、こちらも70歳以上世帯全体(184万6,000世帯)の4割ほどを占めています。

高齢者世帯の約4割が貯蓄2,000万円をクリアしている一方で、貯蓄100万円以下の世帯も存在します。60代で12万世帯(同年代世帯の約9%)、70歳以上で14万世帯(同年代世帯の約8%)を超え、同じ年代の中でも貯蓄額に大きな格差があることが分かります。