すると、話の終わりに「お小遣いで買い集めた漫画、全部母に捨てられたばかりなんです」という思いもよらないことを告白してきました。Aさんの許可なく「勉強の邪魔」とお母さんが勝手に処分したというのです。家には1冊も漫画がなくなり、家での楽しみがなくなったと呟いたAさんの顔を今でも覚えています。

子どもは嫌いと平気で口にする母親

どういうことなのか気になり、「どうしてお母さんは何も言わずに捨てたんだろう」と聞いてみると、予想を遥かに超えた言葉が返ってきました。

「母は子どもが嫌いで全てを否定するんです」

Aさんのお母さんは常日頃から「本当は生みたくなかった」「子どもは嫌い」と言い放ち、我が子であるAさんたちを苦しめていたのです。裕福な父に近づき、好きでもない子どもを生んだのではないか…。Aさんは自分の母親を恨むようになっているようでした。

そんな話を聞き、豊かな生活を送るものの子ども嫌いを明言し、我が子を傷つけ教育は塾や習い事教室に丸投げのAさんのお母さんに恐ろしさすら感じました。

貧しい幼少期を過ごした筆者は、恥ずかしながら経済的に恵まれていれば幸せな人生を送れると信じていましたが、Aさんとの出会いで考えを改めました。何不自由なく過ごせる環境にいながら、親の愛情に飢える子の悲しさをAさんが教えてくれたのです。