「毒親」の特徴には、過干渉、無視(ネグレクト)、暴言や暴力などがあると言われます。中でも、経済的に不安定な環境ゆえに育児放棄したり、成人してからお金を無心するというイメージを持たれることが少なくありません。

「親と一緒に遊んだ記憶がない」「お金がないと言われ、入りたい部活を諦めた」「働き出したら今まで世話した分返せと言われた」…。こうしたコメントはネット上に溢れています。しかし、他人から見て何不自由なく暮らしている家庭の子でも、実は毒親に悩まされていることもあるのです。

母親から趣味を全否定される裕福な家の子

今から15年以上前になりますが、筆者は塾講師の仕事をしていました。

そこで接していたのは皆、個性豊かな子どもたちでした。塾に通っていることからも、生徒たちの家庭環境はそれなりに整っている印象がありましたが、学力レベルは様々です。勉強は苦手だけれど塾で先生たちと話をするのが好き、と笑顔を見せる中学生もいるなど、心の問題を抱えている子はあまりいませんでした。

そんな時、塾に通い始めたばかりのAさんが他の子ども達と雰囲気が違うことに気がつきました。無表情で笑顔をほとんど見せないのです。緊張や勉強嫌いからくるものかと思い、積極的に話しかけてみると徐々に打ち解けて自分から数人の先生に色々な話をするようになりました。

ある日のこと。塾に来ていたAさんから突然「漫画好きですか?」と声をかけられ筆者は、好きだと答えると嬉しそうに自分のお気に入りの漫画の話をし始めました。マシンガントークで話し、いつもとは違うAさんに驚き、戸惑ったたものの、頷いたりしながら耳を傾けました。