「結婚するんじゃなかった」という呪いのような言葉

Aさんと対照的に筆者の実家は裕福とは程遠く、幼い頃から「家は貧しい」というのを肌で感じながら育ちました。母は子どもに対してそれなりに愛情を持って育ててくれたとは思いますが、毎日のように壮絶な夫婦ゲンカを繰り広げ、時には短気な父が包丁を持ち出し生と死を行き来するような騒動が起きていたのです。

そんな環境で、「今日はケンカをしませんように」と、筆者は物心ついた頃からピエロのように空気を読んで家庭内で立ち振る舞っていました。母は料理もし、育児放棄する人ではありませんでしたが、毎日父や父方の親戚の悪口を言い、「あんな人と結婚するんじゃなかった」という言葉で締めていました。

成長するにつれ、母の「結婚するんじゃなかった」「こんな貧乏だとは思わなかった」という小言の数々が筆者を苦しめていきます。

「結婚しなければ私はこの世に存在していない」「子どもがいるから貧乏なのでは」と10歳ごろから自分の存在の意味を考え始めました。父との結婚を後悔しているのならば離婚すればいいのにと真面目にアドバイスしたこともありました。結局、世間の目を気にしたり、経済的に自立できないことなどから、筆者の両親は年老いてケンカをする気力をなくした今でも一緒にいます。

当時の母は、自分の不幸を子どもに訴えて同情してほしかったのでしょう。しかし、「こんな人と結婚するんじゃなかった」という間接的な言い方であっても、子どもは自分の存在を否定されたように感じるものです。そうした言葉を平気で口にするのは毒親体質と言えるでしょう。

「ママ好き」という言葉で思い出した幼い頃の記憶

両親の仲が悪く、不安定な家庭だけれど自分は道に外れず成長したと自負していましたが、いかに家庭環境が悪かったのか思い知ったのは結婚し子どもを出産してからです。