「長期運用」が絶対ではない理由

近年、投資信託の手数料が下がり、税制で優遇されているNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)の登場により、少額から積み立てられる長期運用型の投資に注目が集まっています。コロナ渦になってからも、「長期保有するからこそ利益が出る、あわてて売るべきではない」といった記事を目にしませんか?しかし、これは無責任な意見であるという考え方もあります。

20年かけて積み立てた先に天災や戦争などの理由で相場が暴落したら、その積み立ては金額的にも時間的にも無駄になるでしょう。例えば、日経平均の年初終値は23,204円でしたが3月19日には約30%安い16,552円になります。30%と言ってしまうと簡単ですが、コツコツと長期運用で30%を目指すと以下のような運用になります(※1)。

  • 毎月33,000円を25年、年間2.5%のリターンで運用。
  • 最終積立金額は元本990万円、運用収益約365万円、税金74万円(毎年20.315%)。
  • 税引き後は約1,281万円。最終的な利率は約29%。

悪くない条件かもしれませんね。しかし、売るタイミングによっては25年間の努力が水の泡となる可能性があります。このように、長期運用は出口の部分で相場が大きく崩れると、これまで積み立てていたお金全体が影響を受けるリスクがあるわけです。

幸い今年の場合、日経平均は8月5日時点で22,514円まで回復し、年初と比べると約3%の下げまできています(※2)。しかし、COVID-19感染拡大の収束のめどは全く立っていません。そもそも、私たちの生活がわずか3%しか変化していないと考える人は少ないでしょう。