フィデリティでは2019年秋に、米国、カナダ、英国、ドイツ、香港、日本と、世界的な規模でアンケート調査を行い、現状の退職準備がどれくらい進んでいるかを分析・比較しました。

その「フィデリティ退職準備スコアの国際比較」からは、われわれが退職準備を確かなものとするために何が必要となるかについて多くの示唆が得られます。今回はそのなかでも退職準備に対する予想以上に楽観的になっている日本の姿を紹介し、啓発努力が重要であることを考えてみます。

国際比較でみる日本の現状―退職準備に楽観的

日本のフィデリティ退職準備スコアの中央値は75ポイントで「要注意」水準でしたが、全体の分布もかなり幅広くなっていることがわかります。

「計画通り」の水準が全体の30%、「警戒」水準も36%です。その中間に相当する「あと一歩」と「要注意」の合計は34%ですから、それぞれほぼ3分の1ずつの水準であることがわかります(詳細は『日本人の老後資金は「要注意」水準。退職準備スコアで把握する現状』をご参照ください)。

これはアンケート調査を実施した6か国・地域でもよく似た傾向がみられます。中央値の引き上げには、「警戒」水準の比率を引き下げることが重要だとも言えます。

アンケート調査では、自身の退職準備の進捗状況を、スコアの4分類と同様の定義で自己評価する項目も用意しました。これによって、客観的な評価であるフィデリティ退職準備スコアと、主観的な評価を比較することができます。

特に気になるのは、日本の「警戒」水準に対する主観的な評価と客観的な評価のズレの大きさです。主観的評価で「警戒」水準にあるとした人が14%しかおらず、客観的評価の36%を大きく下回りました。その差は22ポイントになります。

同様の比較を英国でも行ったのですが、28%と41%で、その差は13ポイント、ドイツでも14ポイントでしたので、日本の場合には、退職準備の遅れに対する認識がかなり不足しているのではないかとみることができます。

「警戒水準」に対する主観的な評価と客観的データの比較

注:主観的評価は英国、ドイツ、香港、日本のみで実施。
出所:フィデリティ退職・投資教育研究所、Viewpoint Vol.10、フィデリティ退職準備スコア~リタイアメント・プラン実現のために何をすればいいのか~(2020年4月)