前回の記事では、若い人たちの退職準備に関して新しいゴール設定の考え方をご紹介しました。
カギは2つの特徴で、年収の倍率で最終ゴールを設定すること(退職直前年収の7倍)、そのゴールまでの途中経過目標を年齢ごとに設定すること(30歳で1倍、40歳で2倍)です。そしてゴール達成のために年収の16%を資産形成に振り向けるべきだと紹介しました。
こうした考え方は、海外のフィデリティでも共通に使われ、現地の社会保障の実情などを考慮して、それぞれの国・地域の目標を設定して消費者の皆様に提案をしています。
さらに2019年秋には米国、カナダ、英国、ドイツ、香港、日本と、世界的な規模でアンケート調査を行い、現状の退職準備がどれくらい進んでいるかを分析しました。国際比較をすることで、改めて日本の実情と課題、そして対策が見えてきました。
今回から複数回に渡って、アンケート結果とその分析からわかったことをご紹介していきます。
フィデリティ退職準備スコアで現状を把握
日本で行ったアンケート調査の有効回答者数は2,342人でした。その結果からアンケート回答者の退職準備の現状を下記の計算式で算出し、回答者個人個人の数値を「フィデリティ退職準備スコア」として算出しました。
フィデリティ退職準備スコアの計算式は、
として、これを0 - 150ポイントでスコア化します。ただ、細かい数値が問題ではないので、これを4つの大きなカテゴリーに分類しています。
日本の退職準備スコアは75ポイントで「要注意」水準
このスコアで、95ポイントを超えていれば「計画通り」に進んでいるというカテゴリーに分類し、65ポイント未満であれば、「警戒」水準として、退職準備を加速させるか、そうでなければ退職後の生活水準を大幅に見直さざるを得ないと警告しています。
ちなみにアンケート回答者のフィデリティ退職準備スコアの中央値は75ポイントでしたので、日本全体としては「要注意」の水準です。「警戒」水準ほどではありませんが、このままでは退職後の生活水準の見直しは不可避になりますから、退職準備の改善を図る必要があるということがわかります。
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合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史