新型コロナウイルスの世界的感染拡大に伴って人々の移動が制限される中、航空業界では利用者の激減による業績と財務の悪化が懸念されている。海外では破産申請をする航空会社が出始めており、国内大手2社のANAとJALの株価も引き続き軟調に推移。

2021年3月期第1四半期の決算は、両社ともにすでに大幅な赤字になるのではと各種報道されている。今回は両社の財務を軸に株価に焦点を当て、考察する。

低稼働続くエアライン各社、海外では大手が破産申請

新型コロナウイルス感染の可能性に対する警戒から世界的に人々が移動を自粛したり、政府が入国規制を設けたりするなどして、空港の利用者は大きく減少している。

7月9日に発表されたANAグループの5月の実績でその影響度合いを確認してみよう。

まずは、海外線だが、5月の旅客数は対前年同月で見た場合に3%、つまり対前年同月比97%減だ。国内線も同様に見てみると、旅客数は同5%で95%減という状況だ。

国内線の路線別旅客輸送実績を見てみると、「東京―札幌」で前年比10%、「東京―大阪」で同7%、「東京―那覇」で同22%となっており、路線によって差はあるものの、東京からの主要都市を結ぶ路線も大きく落ち込んだままだということが分かる。

固定比率の高いエアライン産業

航空会社のビジネスモデルも輪をかけて危機感を強まらせている。航空会社の固定費率は高いといわれている。

固定費とは事業を稼働せずとも発生する費用であり、航空会社でいえば人件費や機材リース費、システム費、借入金の金利費などが挙げられる。この費用が大きいということはそれだけ資金が多く流出することを意味し、収入が激減している航空会社の保有キャッシュは刻々と減少している。

こういった状況下、海外では資金が尽きて経営破綻する航空会社も出てきた。