混乱した筆者は持っていた年賀状を詳しく分類していきました。知らない苗字の人を選り分けて母に確認していくと、仕事関係者を除くとその全てが母方の親戚筋であることが判明したのです。
「どうしてあだ名みたいに呼ぶの?」と子供ながらに素朴な疑問をぶつけてみましたが、「昔からそうなの」と素っ気なく返されてしまいました。その年の夏、祖母の家に泊まった時に地域の人々がしている会話をよく聞いてみると、案の定その集落でだけ通用する言い方で家や人々を呼んでいたのです。
ちなみにタケダは竹林と田んぼの間を意味し、カミサンは集落の神社を代々守っている家の通り名として使われていました。両家ともにまったく通り名とは似ても似つかない本当の苗字を持っています。
悪い噂話は100年以上経っても言い伝えられる
今回のコロナ禍で、たびたびインターネット上で指摘されている「田舎でコロナになったら世代を超えて言い伝えられる」という話は、あながち嘘ではないと思います。
筆者の母は「誰々さんの何世代か前の四男坊は博打で借金をして村から追い出された」という話を小さい頃からよく口にしていました。もちろん、そんな話を子供からせがむわけがありません。何の前触れもなく突然話し始めるのです。
中学生の頃にまた聞かされた際、「その何世代前というのは大正時代、まさか明治時代じゃないよね」と冗談半分で聞いてみました。すると、母の口からは予想を超える衝撃的な言葉が出たのです。