7月から有料化されたことで話題になっているレジ袋は、何からできているのでしょうか? レジ袋はその便利さから大量に使われていますので、皆さんご存知でしょう。そう、ポリエチレンという化学物質です。
とはいえ、レジ袋についてある程度化学的に説明できる人は、そう多くないのではないでしょうか。レジ袋に限らず、身の回りでこれだけ化学製品や化学物質が使われているのに、意外と化学的な“からくり”を知らないで使用していることが多いように思います。
理屈はともかく、使えればいいのかもしれません。しかし、身の回りの生活と化学が遠く離れてしまっていることは、決していいことではないと、有機合成化学を専門として大学教育に関わってきた筆者は思います。この「かい離」が、環境問題への意識が高まらないことにつながっている可能性もあります。
そこで本稿では話題のレジ袋について、その化学をできるだけやさしい言葉で説明し、少しだけ環境問題について考えてみたいと思います。
化学物質としてのポリエチレンとエチレン
ポリエチレンのポリは高分子・ポリマー(Polymer)のポリです。原料のエチレンは気体で自然界にも存在する果物などが熟す時の植物ホルモンで、輸入したばかりの青いバナナを黄色くするのに使われます。
買ってきた黄色のバナナや熟したリンゴと一緒に、新鮮な野菜や果物を冷蔵庫に入れておくと野菜の萎れが速く、硬かった果物がより速く柔らかくなります。昔、リンゴとカーネーションを混載した夜行列車が朝、東京に到着したところ、カーネーションが一晩で一斉に萎れてしまっていたことは有名な話です。これはエチレンが原因の出来事です。
このエチレン分子を、いくつもつなげた(重合)ものがポリエチレンです。常温・常圧で、ある種の触媒(化学反応を促進させるもの)を用いると、目に見えないエチレンガスが雪のように白い粉末となってパラパラと落ちてくることが発見されたのは、今から60年以上前のことです。この画期的な化学反応を見つけた2人の化学者には、1963年ノーベル化学賞が授与されました。