ギグワークはwin-winの関係

世の中には驚くほど能力が高いのに、労働市場に存在しない人たちがいます。本業で売り物になるほどではない特技などが挙げられます。上述したエクセルのマクロを組んでくださった会社員の方も、別にエクセルのマクロを本業としているわけではありません。本業の業務の中で使用することが多く、その経験をネットで売買したということです。

従来は、労働力は労働市場に出ているものでしか利用できませんでした。しかし、これからは「個の時代」が本格的に始まります。「絵を書くのが得意」「作曲ができる」こうした特技は会社で採用されるまでのものでなくても、ネット上で頻繁に労働力とお金が交換されています。筆者も上述したビジネスの他に、「セミナーに登壇する際のアシスタント」をギグワーカーに助けてもらっています。セミナー会場の受付やお手洗いの案内、資料の配布、会場のセッティングなどをおまかせできるので、セミナーの内容に集中でき、大変助かっています。そしてギグワークとしてお小遣い稼ぎで始めた特技が、いつしか本業になっていく人も出てきます。

しかし、ギグワークはいいことだけではありません。デメリットとしては、サービスの価格に下方圧力が働くことです。それまで本業のビジネスとして提供していたことを、ギグワーカーと競争することになります。ギグワーカーは本業ではなく空き時間で取り組むので、多くは法人と契約書を交わしてオーダーするより安価でこなしてくれます。この流れが進むことで、その人にしかできないサービスなどでない限り、価格の下方圧力がかかりサービスの料金低下を招くことになります。

またギグワーカー側のデメリットは、基本的に仕事が単発で終わってしまうため、入ってくる収入が安定しないといったことも。そのため、たくさんの仕事をこなして、ようやく生活できる…といったような「セルフブラック化」も招きかねません。

しかし、長い目で見ればうまく労働の再配分が進むと思っています。いつの時代もできる人が限られる専門性の高い仕事は単価が高く、そうでない仕事は安くなります。働く側としては高単価を維持するために、専門スキルを伸ばし、仕事を依頼する側は安いコストでビジネスを進めることができるメリットを享受できるでしょう。

賛否両論あるギグワークですが、個人的には「アリ」だと思っています。

参考

(※1)「日本のギグワーカー100万人増 20年上半期」日本経済新聞
 

高級フルーツギフトショップ「水菓子 肥後庵」代表 黒坂 岳央