日本は正社員が異常なほど守られている

ブラック企業のひどい環境に置かれていても、なぜ従業員はさっさと退職せず、時には自死を選んでしまうまで、会社に残ることを選択する人がいるのでしょうか?その理由は、日本特有の雇用制度にあります。

米国では不況になるとあっさりレイオフが敢行され、実際にコロナショックで4月は2,050万人、14.7%という驚くべき失業数を記録しました(※)。しかし、日本の場合は正社員が大変手厚く法律で守られており、一部ではクビ切りが断行されていますが、現時点では米国ほど急激な失業者数の高まりは見られません。日本では、会社がよもや倒産の憂き目に遭うほどの危険な状況にならない限りは、正社員を簡単にクビにすることはできないからです。

日本は正社員が異常といえるほど失業から手厚く守られており、結果として労働市場の流動性が極めて悪い状況になっています。これが「一度入社した会社を移動しない」という状況を作り出しているのです。

そのため会社を退職する人に対するイメージは「パフォーマンスが悪いか、忍耐力に欠けるのでは?」というネガティブなものではないでしょうか。そのために「入社後にすぐ辞めると、次の転職で不利になりかねない。石の上にも三年だ」という言葉が使われていると考えます。上述の通り、筆者がブラック企業を退職するのに迷っていたのもこのためです。

この労働市場の流動性の悪さこそが、日本社会にブラック企業を生み出している元凶と筆者は考えています。