ブラック企業は従業員をボロ雑巾のように使い捨て、働けなくなったら容赦なくポイ捨てする「悪魔のような経営者」が生み出すという印象を持っている人は少なくないと思います。従業員は常に被害者であり、とくにスキルも経験も乏しい、新卒入社の若者にとっては「ブラック企業など、絶対に入社したくない!」という強い気持ちを持っている人も多いのではないでしょうか。

しかし、筆者は必ずしも経営者だけの責任ではないと考えています。筆者は会社員をしていた時代に、「ブラック企業」に該当する会社で働いた経験がありますし、現在は経営者の立場でもあります。両方の立場を体験して見えてきたのは、「ブラック企業が存在する理由は、経営者や従業員の責任というより、正社員があまりにも手厚く守られている雇用制度」にこそ問題があると感じているのです。

ブラック企業での勤務体験

筆者は昔、非正規雇用でブラック企業で勤務した経験があります。

ブラック企業の定義は長時間労働、パワハラなどがあげられますが筆者の場合は以下のような会社でした。

  • 長時間労働(週に2、3日は会社やホテルへ宿泊)
  • 休日出勤(土曜日は90%以上出勤。日曜日もたまに…振替休日はなし)
  • 給与遅配
  • パワハラ(社長が気に入らないとパワハラで退職へ追い込まれる)

ブラック企業で勤務することの問題点は、「働くデメリット>メリット」という通常は考えられない状況に陥ることです。給与はもらっていましたが、頻繁に遅配が発生し残業代も休日出勤手当もなく、夜のコンビニバイトをした方がマシなレベルでした。

そうなると、その会社で働く経済的なメリットを見出すことはできませんから、スキルアップや人間関係から学ぶなど、市場価値を高める資産性のある経験を得られることを期待するしかありませんが、あいにくそれもありませんでした。

勤務時は当たり前のように夜中2時、3時近くまで働いていたので、感覚が麻痺していましたが、ブラック企業で働くメリットは一切ないと体感レベルで理解できたものです。本音では一日も早く辞めたかったのですが、短期退職をすると「次の面接で悪印象を与えてしまうのでは?」と不安で、辞めるに辞められなかったのです。