ただし問題は、高校卒業から就職までの期間が5年に延び、学生や保護者の負担が増してしまうことです。これを避けるためには、イギリスのように卒業履修期間を3年として、ギャップイヤーを1年とすればいいのですが、それには思い切った我が国の教育改革が必要になります。
我が国の大学卒業履修期間は一般的に4年です。しかし、卒業研究は別として3年間で卒業に必要な単位を修得してしまう学生は多く、特に文系学部で顕著です。6・3・3・4制度を見直すことはかなり難しいことですが、検討に値するかもしれません。
おわりに
9月入学について、安倍総理は「これぐらい大きな変化がある中で、前広に様々な選択肢を検討していきたい」と語りました。
また、萩生田文科相は「文科省内では一つの選択肢、考えていかなければならないテーマとして、様々なシミュレーションはしてきている。オールジャパンで子どもたちの学びを確保するために、もう、これしかないんだ、と本当に一緒に考えていただけるのだとすれば、一つの大きな選択肢にはなっていくと思う」と述べています。
この発言は、あたかも国民任せのように思えなくもありませんが、確かに9月入学改革を、社会全体の問題として国民一人一人の共通認識として位置づける必要があるように思います。不祥事の続いた文科省の覚悟に期待したいと思います。
9月入学の議論は我が国の社会を大きく変えるほどの大きな教育改革、それも制度上の改革です。大事なことは、その制度改革の議論の中で、より精神的な視点、すなわち生徒・学生の心に寄り添い「生きるための人間力」を養う、「心底からの人づくり教育」を忘れてはならないことです。
教育は、言うまでもなく国の存亡を左右する極めて重要な根幹をなすもので、「国家百年の大計」なのですから。
和田 眞