9月入学、まずは大学からと考える理由

この原稿を執筆中、5月27日の報道で「政府・与党は2021年度からの9月入学を見送る方針を固めた」と伝えられました。この報道により、9月入学構想は消滅との声もあります。しかし一方では9月入学賛成派も少なくないことから、政府・与党は将来的な9月入学導入についての議論は続けるとの情報も伝わってきています。

今回のコロナ禍で浮上した9月入学の議論は、主に小学校に焦点が当てられてきましたが、当然、中学校、高等学校、大学まで関係することです。しかし、この9月入学が、いつから、どこに、どこまで導入されるかという点、また在校生の卒業時期などの議論はほとんど聞こえてきません。

入学について言えば半年前倒しになるのか、卒業については半年遅れるのか、話は複雑です。しかも、就職時期のことも考慮に入れなければなりません。

不透明なことが多いですが、ここでは、大学から9月入学を実施すべきだと提案したいと思います。その場合、高等学校の卒業が今まで同様3月であり、就職時期が4月ならば、上記3、4のように、それぞれ半年間のギャップタームが生じます。

入学前のギャップタームは、受験競争で染み付いた偏差値至上主義の価値観をリセットでき、入学後に何をどう学ぶかを考える絶好の機会になるはずです。すなわち、「学歴」ではなく、「学」と「歴」の間に「習」を挿入した「学習歴」が重要であることに気づくはずです。

また、卒業後のギャップタームは、実社会に歩み出すための心構え、これからの人生設計を考える貴重な機会となるように思います。

したがって、ギャップタームは決して無駄にはならないでしょう。この貴重な時間が、学ぶということ、教育とは何かを考える発端になるはずです。そのような制度を作れば我が国の教育が変わり、社会がより良く変わっていく推進力になると思うのです。