「それでかなり揉めて、一時期は口もきかなくなってしまった。高校生になる娘が私の気持ちを汲んでくれて『お母さんは、おばあちゃんを早くに亡くしていて親孝行できる人はもうおじいちゃんしかいないんだよ』と言ってくれて、夫も降参。それで仕事をやめることになった」とのこと。
しかし、Aさんは離職したことを後悔していると言います。
「親孝行したいという気持ちは強かった。その一方で、早まったかなとも思っている。たしかに父親は足が不自由になったけれど、家をリフォームして手すりをつけたり、段差をなくしたりして工夫をすれば、仕事をやめるまでしなくてよかったかもしれない。派遣社員とはいえ、この年でまた仕事を探すのは大変」と話していました。
高齢になってからケガをするとそのまま要介護の状態になってしまうことは少なくありません。しかし、Aさんの言う通り、住宅の設備を整えたり、出勤日数を減らしたり、旦那さんや娘さんと協力することで介護と仕事を並行できたかもしれません。
ただ、このように突然介護が必要な状態になると、冷静にはなれないもの。予想外のケガなどで要介護の状態になる可能性があることとも考慮して、早めに、できれば自分が30代で親がまだ元気なうちから介護が必要になったときの方針を考えておいたほうがいいでしょう。
ケース2:介護のことが何もわからなくて困った
続いて、娘と息子を持つ50代のBさんのケースを見てみましょう。Bさんは、お父さんが病気で要介護状態になってしまったと言います。
「妻に仕事をやめてもらい、介護をお願いした。妻は献身的に介護をしてくれたけれど、身体的にも精神的にもつらかったと思う。最初は何もわからず、毎晩2人で介護のことを調べまくった。手続きは結局妻に任せてしまったけれど、知識ゼロの状態から2人で手探りしながら調べるのは本当に大変だった」とのこと。