「未払賃金の立替払制度」って?
通常、賃金に未払いが生じた場合、まず労働者が事業主へ支払い請求を行います。それでも未払いのままであれば、労働基準監督署へ申告する、という流れが一般的です。
今回取り上げる「未払賃金の立替払制度」は、企業が倒産(事実上の倒産も含む)した場合、賃金未払いのまま退職した労働者に対し、事業主に代わって国が未払賃金の一部を立替払いするものです。独立行政法人労働者健康安全機構が実施しています。
立替払いを行った場合には、機構が「立替払いに相当する額について、労働者の承諾を得て賃金請求権を代位取得し、事業主に求償(立替え分の請求)する」というしくみになっています。
同機構によると、1976年の制度創設から2019年3月までに、約124万人に対して総額約5198億円の立替払いが行われています。ちなみに、2018年度における立替払支給者数は2万3554人、立替払額は96億円です(※1)。
制度の概要
では、同機構のリーフレット「未払賃金の立替払制度の概要」などを参考に、この制度のあらましについてみていきます。
事業主に関する要件
- 労災保険の適用事業で、1年以上事業を実施していたこと(法人・個人は問わない)
- 倒産したこと
- 法律上の倒産
破産手続開始の決定(破産法)
特別清算手続開始の命令(会社法)
再生手続開始の決定(民事再生法)
更生手続開始の決定(会社更生法)
- 事実上の倒産(中小企業事業主のみ)
事業活動の停止、再開の見込みなし、賃金支払能力なし(労働基準監督署長の認定)
※ 中小企業事業主とは、以下のいずれかに該当する事業主をさします。
資本金の額等が3億円以下または労働者数が300人以下で、以下の業種以外の業種
・資本金の額等が1億円以下または労働者数が100人以下の卸売業
・資本金の額等が5千万円以下または労働者数が100人以下のサービス業
・資本金の額等が5千万円以下または労働者数が50人以下の小売業
労働者に関する要件
- 破産手続開始等の申立日(事実上の倒産の認定申請日)の6か月前の日から2年の間に退職していること
- 未払賃金額等について、法律上の倒産の場合には、破産管財人等の証明(事実上の倒産の場合には、労働基準監督署長が確認)があること
- 破産手続開始等の決定(事実上の倒産の認定)の日の翌日から2年以内に未払賃金の立替払請求書を労働者健康安全機構に提出すること