国際標準化は「守り」から「攻め」へ
国家規格は、どの国でも海外製品の流入から自国の産業を守るという側面を持つ。しかし、いま中国が取り組んでいるのは世界市場に打って出るために必要な「国際通用規格」づくり、つまり「守り」のためではなく「攻める」ためのツールだ。中国はすでに特許申請数で世界トップになり、18年には30年ぶりに標準化法を改正し、「知財強国」への転換を進めていることは明らかだ。
技術覇権競争とは、ハイエンド製品で世界マーケットのシェアを競い合うことだけではなく、自国の規格を世界の標準規格として普及させる争いでもある。技術覇権争いの行き着く先は、おのずとして標準化競争ということになる。中国もそう認識しており、改正した標準化法には「中国標準を国際標準にする」と明記されている。
技術力を向上させた中国企業が日米欧韓などのエレクトロニクス企業と国際市場で競合するようになり、「メード・イン・チャイナ」の製品は日常的に目にするようになったが、今後は「メード・イン・チャイナ」製品の世界浸透から「チャイナ・スタンダード」をかけた覇権争いが加速していくことになるだろう。
最近の事例では、新型コロナウイルスの対応でも中国は世界で最初に封じ込めに成功し、ウイルスの隔離や治療法に関する情報を海外に発信する立場になっている。世界の多くの国が中国の事例を学び、中国流の対策法を採用した。ワクチンが一般流通するようになるまでにしばらく時間がかかるが、ワクチン開発でも米中はしのぎを削っている。中国が世界に先駆けてワクチンを開発したら、そのワクチンが一種の国際標準として多くの国で迎えられる可能性もある。中国にとってこれは国際標準化に向けた大きなチャンスとなるかもしれない。
電子デバイス産業新聞 上海支局長 黒政典善
まとめにかえて
中国が推進するハイテク産業戦略が次のステージに移行しようとしています。当然のことながら、視線の先に対立する米国との覇権争いが念頭にあります。先ごろ米国商務省も軍事転用の阻止を目的に、さらなる規制強化を打ち出しました。新型コロナウイルスのパンデミックからいち早く立ち直った中国は今後、ますます世界での存在感を強めていく可能性が高そうです。
電子デバイス産業新聞