本記事の3つのポイント
- 中国はハイテク技術戦略をまとめた「中国製造2025」に次ぐ、中国の技術規格を国際標準化させる「中国標準2035」戦略を発表する
- しかし、情報量は少なく、分かっているのは20年1月に第1次作業の完了報告会が開催された程度。今後1年かけて専門分野ごとの策定作業を行う
- 国内標準化を狙う分野は5G通信やAI対応監視カメラ、産業ロボット、自動運転など
米中貿易戦争の背景には中国のハイテク技術の台頭があり、両国の技術覇権争いは長期に及ぶものと考えられている。中国はハイテク技術戦略をまとめた「中国製造2025」という言葉を最近はあまり使わなくなったように思うが、次は中国の技術規格を国際標準化させる「中国標準2035」戦略を発表するものとみられる。この策定チームは先ごろ、2年に及ぶ準備作業を終えたばかりだ。今後、中国が国際標準を取りに来ると考えられる重点分野について考察した。
15年に「中国製造2025」開始
2013年に発足した習近平政権は2年後の15年に「中国製造2025」を発表し、「世界の工場」から脱却して世界水準の製品とサービスを生み出す「製造強国」への転換を目指す国家戦略を打ち出した。
文書のタイトルには「2025」とあるが、実際は中華人民共和国の建国から100年後にあたる2049年までのロードマップが示されている。25年までのステップ1で生産性とイノベーション力を十分に向上させ、35年までのステップ2で重点分野において技術ブレークスルーを果たし、ステップ3の50年までに世界トップに立つという長期目標が設定されている。わかりやすくいえば、ステップ1で世界の「上の下」、ステップ2で「上の中」、ステップ3で「上の上」にランクアップしていくというイメージだ。
「中国製造2025」では、世界の頂点に立つべく重点的に成長させる10大分野を指定している。半導体や5G通信設備などが含まれる情報・通信技術はその筆頭に挙げられ、中国はこの計画の発表以降、先端半導体の国産化の歩みを加速した。
「世界の工場」となった15年ごろから中国は「安かろう、悪かろう」のイメージから脱却し、ファーウェイ(スマホや通信機器)やレノボ(PCやサーバー)、DJI(民間用小型ドローン)など独自ブランドを世界マーケットに供給する企業が目立つようになった。この成長には当然、中国企業自身の努力もあったが、中国政府の優遇政策や補助金などに支えられていた側面も大きかった。それが18~19年に米中貿易戦争というかたちに発展し、「中国製造2025」戦略は再び世界の注目を集めるようになった。中国はその後、米国との摩擦を肥大化させないよう「中国製造2025」というフレーズを露骨にアピールしなくなった。