この春、全国で私立高校授業料の実質無償化がスタートしました。
家庭の教育費負担を軽減する目的で2010年4月に創設された「高等学校等就学支援金制度」がこの春大幅に拡充され、さらに手厚い支援が実現します。
多くの子どもたちの進路の選択肢を広げるこの制度。
今回は、ちょっと分かりづらいそのしくみについて、文部科学省のデータなどをみながら整理していきたいと思います。
まずは「高校の学費ってどれくらい?」というデータから。
「高校進学にはどれくらいお金がかかるのか」
では、高校に進学するにあたり必要となるお金についてみてみましょう。
私立高校
文部科学省が2019年12月に発表した「令和元年度私立高等学校等初年度授業料等の調査結果について」の「令和元年度私立高等学校等の初年度生徒等納付金平均額(年額)」では、私立高校(全日制)の平均就学費用の平均額について次のようなデータがでています。
入学料:16万3,362円
授業料:40万4,713円
施設設備費等:16万8,602円
公立高校(※例 東京都)
次に、公立高校の授業料の一例として、東京都教育委員会ホームページ「都立高等学校、中等教育学校(後期課程)の授業料・入学料及び特別支援学校高等部の授業料について」によると、都立高校(全日制)進学にかかる費用は以下の通りです。
入学料:5,650円
授業料:11万8,800円
(その他学校徴収金などは、学校によって異なります)
国の「高等学校等就学支援金」って何?
先述の就学費用のうち「授業料」の部分を、親権者などの所得に応じて支援するのが、国の「高等学校等就学支援金」の制度です。
次では、この制度の概要、および2020年4月からの制度拡充のポイントなどを、文部科学省の「2020年4月からの『私立高等学校の授業料の実質無償化』リーフレット」をもとに解説していきましょう。
「高等学校等就学支援金」(2020年4月からの新制度)の概要
- 内容:国が行う授業料支援の制度で、8割の生徒が利用
- 対象となる世帯:モデル世帯で年収約910万円未満世帯の生徒(所得制限額を超える場合は支給されない)
- 対象となる学校種:高等学校、特別支援学校(高等部)、高等専門学校(1~3年生)など
- 申込先:学校。入学時の4月など手続きが必要な時期に学校から案内がある(学校によってはオンライン申請が可能)
では、新制度は、旧制度からどのような点で拡充されたか、見ていきましょう。
「国立・公立」は旧制度で既に実質無償に
これまで「高等学校等就学支援金」制度(旧制度)では、以下の補助金がありました。(いずれも全日制課程の年額)
- 国立:11万5,200円
- 公立:11万8,800円
- 私立:11万8,800円※世帯年収により、上乗せあり
※世帯年収目安270万円未満:上限額29万7,000円
350万円未満:上限額23万7,600円
590万円未満:上限額17万8,200円
590万円以上910万円未満:上乗せなし
国立・公立高校の授業料はこの支給金額内でおさまるため、すでに旧制度の時点で無償化されていました。
しかし私立高校は授業料が高額となるため、就学支援金でまかなえない差額の部分は保護者負担となっていたのです。
その負担を解消するために、2010年4月からの新制度では、年収目安が約590万円未満の世帯の生徒を対象に、私立高校の就学支援金の上限が39万6000円※に引き上げられました。
(※私立高校の平均授業料を基準に定められた金額です。)
その結果、授業料が就学支援金以下の学校に通う場合、授業料が「実質無償」となったのです。
下の図をご覧いただくとイメージしやすいでしょうか。
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「2020年4月からの『私立高等学校授業料の実質無償化』リーフレット」文部科学省の資料をもとに編集部作成
各自治体独自の補助金も
国の「高等学校等就学支援金制度」のほかに、各都道府県独自の補助金制度もあります。いくつかご紹介しましょう。
支給の条件・対象年収・支給時期などの詳細は、各関係機関ホームページや学校などに確認してくださいね。
東京都
「私立高等学校等授業料軽減助成金」
令和2年度(2020年度)は、助成対象の拡大や軽減額上限の引き上げなどの変更点あり。
- 年収目安760万円未満の世帯→年収目安910万円未満の世帯まで拡大
- 所得要件を超過する多子世帯※への助成を新たに導入(※23歳未満の子を3人以上扶養する世帯)
- 軽減額上限の引き上げ
全日制・定時制:45万6,000円→46万1,000円
通信制(東京都認可):24万7,000円→25万4,000円
(ただし、保護者が実際に負担した在学校の授業料の額が上限となる)
(公益財団法人東京都私学財団HPを参考に、一部を紹介)
大阪府
- 国の就学支援金と合わせて、年収590万円未満世帯については授業料が無償
- 年収590万円以上800万円未満世帯:保護者負担20万円となるように、標準授業料を上限に補助
- 標準授業料を超えた授業料を設定している私立高校等に通学する場合:差額分は学校が負担
- 府内の私立高校生を含んで2人の子どもを扶養する世帯で年収590万円以上800万円未満世帯:保護者負担10万円となるように支援
- 年収800万円以上910万円未満世帯:保護者負担30万円(授業料が60万円を超える学校の場合は、超える額に30万円を加えた額)となるように支援
- 府内の私立高校生を含んで3人以上の子どもを扶養する世帯で年収800万円以上910万円未満世帯:保護者負担10万円(授業料が60万円を超える学校の場合は、超える額に10万円を加えた額)となるように支援。
(大阪府ホームページを参考に、一部を紹介)
これから高校などに進学するお子さんがいる人は、お住まいの自治体のHPなどをチェックしてみましょう。また、これから始まる受験生向けの説明会などでもリーフレットなどが配布されることが多いですよ。
ここまでご紹介したのは、「授業料部分」について支援する制度ですが、「授業料以外」の部分についての支援にはどのようなものがあるのでしょうか。最後に少し触れておきましょう。
「返還不要」の就学支援制度、他にもあるの?
先述の「高等学校等就学支援金」は授業料部分を支援する制度でしたが、授業料以外の部分についての給付は「高校生等奨学給付金」があります。先述の高等学校等就学支援金とは支給条件やしくみが異なりますので、簡単にご紹介します。
高校生等奨学給付金の概要
- 内容:教科書費・教材費など、授業料以外の教育費支援
- 給付対象:生活保護世帯、住民税所得割非課税
- 対象となる学校種:高等学校等就学支援金と同様(※特別支援学校を除く)
※特別支援学校は「特別支援教育就学奨励費」による支援あり
- 申込先:学校または都道府県(毎年7月頃に申し込み)
(文部科学省ホームページより一部抜粋)
各都道府県の問い合わせ先は、文部科学省ホームページの「高校生等奨学給付金のお問合せ先一覧」をご参考に。
さいごに
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、私たちの多くが、健康、仕事、お金などのさまざまな面で先行きが見えない状態におかれています。
また、全国の多くの学校で、新学期のスタートを延期せざるを得ないという問題が発生しています。
でも、子どもの受験・進学は待ったなし。
これからお子さんが高校受験だという家庭の心配はとても大きいことでしょう。
「私立は学費が高いから無理よ」「きょうだいが多いから全員公立にしてね」などと進路の選択肢を狭めてしまう前に、ぜひ、今回ご紹介した支援制度も頭に入れつつ、今後の出費の心づもりをしていけるとよいですね。
これらの制度を利用するには申請手続きが必要となります。必要な書類は進学先の学校から配られますので、手続きを忘れないようにしてくださいね!
目標に向かって頑張る子どもたちが、安心して進路を選ぶことができるように、さあ、背中を押してあげましょう。
参考URL
「令和元年度私立高等学校等初年度授業料等の調査結果について」 文部科学省
「都立高等学校、中等教育学校(後期課程)の授業料・入学料及び特別支援学校高等部の授業料」東京都教育委員会
「2020年4月からの『私立高等学校の授業料の実質無償化』リーフレット」文部科学省
「私立高等学校等授業料軽減助成金」公益財団法人東京都私学財団
「私立高等学校等授業料支援補助金制度」大阪府
「高校生等奨学給付金」文部科学省
「高校生等奨学給付金のお問合せ先一覧」文部科学省
池上 翠