世界的に経済不況が長引けば、各国のSME向け融資現場で貸し渋りが発生することが心配されます。そんな中、金融機関の融資行動を底支えするようなフィンテックを集めて融資プラットフォームを構築・運営することは面白いアイデアです。

私個人の理想像はというと、SME内部の経理・会計、資金繰り、金融機関内のKYC(顧客確認)、SME顧客の預金・入出金データの入手・分析、審査データの入手・分析、クレジットスコアリング、融資判断、モニタリング、債権回収など一連の融資実務フローを支えるような、最先端のフィンテックを総動員したプラットフォームです。

基本的には、金融機関やオルタナティブレンダーなどが、それぞれ独自に取り組むべき課題ではあります。これまでにも複数の地方銀行が共同でフィンテックの共同研究・開発を行うといった事例はありますが、今後、経済不況が長引く不透明なシナリオにおいては、フィンテックに疎い金融機関やSMEが即座に利用できる融資プラットフォームの緊急性・必要性が一段と高まっていくのではないでしょうか。

SMEクレジット・スコアリングの設計など様々な課題はありますが、統合的なプラットフォームの構築は技術的には可能です。英国の事例のように、多くのフィンテックが得意技を持ち寄って一つのプラットフォームを構築するというのも、一考に値するかもしれません。

今後は「チャレンジャーバンク」の大きな波も

さらに、今回のコロナウイルス感染拡大による外出制限(日本では今のところ「自粛」ですが)の影響でSMEの行動パターンが変化し、世界中でデジタルバンキングサービスを選好するSMEが増えていくかもしれません。

そうなれば、銀行業務ライセンスを取得して金融サービスをモバイルアプリ上で提供する「チャレンジャーバンク」(例:英国Monzo、米国Atom、ドイツN26)の大きな波が世界中に押し寄せてくるでしょう。

つまり、今回のコロナウイルス危機を一つの契機として、金融サービスのデジタル化が加速し、世界中のSME向け金融サービスのあり方が劇的に変容する可能性があると思います。そして、それが新たなエコシステムとして厳しい金融環境に晒される多くのSMEを救うことにつながればとも期待しています。

【参考資料】
Coronavirus - Business support to launch from today” (英国政府ウェブサイト)
生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付」(日本政策金融公庫ウェブサイト)
MSME Finance Gap Report 2017”(IFC、国際金融公社)

大場 由幸