――「できる人が、できるときに、できることを」やるのがボランティアとのことですが、オリンピックでは、中には専門的な知識や経験をもとに活動しているボランティアもいます。西川さんも「通訳のプロ」です。プロには相応の報酬を支払うべきだという声もあります。

西川:ボランティアの「言語サービス」とプロの通訳とは活動の場所も活動の内容も大きく異なります。報道機関などは自社で独自の通訳を雇います。「プロ」としての仕事はいくらでもあります。ただし、仕事として入った場合は対価に見合った仕事をしていくらという計算になります。プロには仕事であれば相当の報酬は必ず払うべきです。

ただしプロがプロボノ活動(自分の専門領域・得意分野を生かして行う社会貢献活動)としてボランティアに参加するのはよくあることですし、これは無償であっても自分の意志ですから問題ないという考えです。

私の経験で言えば、プロボノとしての言語サービスは、外国人のボランティアと一緒のチームになって和気あいあいと楽しみながらやれました。冬季大会の場合は、会場が都心から遠いためボランティアにも宿舎が用意されます。文字どおり寝食を共にしながら、学生時代の合宿のような感じです。ソチ大会で同じチームだった人たちとは今でもSNSでやりとりしています。まさに生涯の友人です。仕事で参加するのとは違った経験ができました。

もちろん、プロの人が仕事として参加したいということであればそうすればいいのです。私の友人も放送局などと契約して参加しています。どちらを面白いと感じるかは、本人の考え次第だと思います。

――プロとして参加する場合、義務感がかなり強くなりそうです。少しぐらい体調が悪くても行かなければならないような印象があります。

西川:プロであっても体調が悪ければ休めるようになっているべきです。ただ、そこは契約なので、ある人が行けないなら、代わりの人を充てるといったことは、契約している派遣会社などが行わなければなりません。

一方で、ボランティアは契約ではありませんから。体調が悪ければ休めばいいのです。自分自身の体調だけでなく、子どもが熱を出したとか。そんなときに柔軟に休めるのもボランティアのいいところです。このあたりも日本人は「一度オファーを承諾したら休めない」などと考えがちなのですが、承諾した後でも仕事や家庭の都合など参加できなくなったら、いつでも辞退できますから。

ボランティアとして参加することで成長できる

――日本ではまだボランティアの意味が誤解されがちだというお話でしたが、家族や会社の同僚・上司の理解を得られないという人もいるようです。