多様な働き方を選択できる社会実現を目指し推進されている「働き方改革」。政府は2018年の1月から「モデル就業規則」を改訂、副業・兼業に関する規定を新設したことでビジネスパーソンの注目を集めています。

しかし、いまだに7~8割の企業は副業を認めていないそうです。

経済危機や大災害など、何が起こるか読めない現代において、副業を始めてスキルや収入を高めたいと思う方は多いはず。そんな中、なぜ副業を認める企業は増えないのでしょうか。複数企業で同時に働くプロの知を活用して経営課題を解決する「プロシェアリング」を運営するサーキュレーション代表取締役を務める私、久保田雅俊が解説します。

4つのパラドックスの存在

なぜ企業は副業を認められないのでしょうか。それは「副業パラドックス」が起きているからです。パラドックスとは、逆説やジレンマ、矛盾といった意味を含む言葉です。

今は副業・兼業において、企業と個人にパラドックスが起きて、互いに綱引きしている状態です。この均衡を正しく導いていけるかどうかが、今後の日本の働き方の多様化や経済成長の肝になります。

では、今起きている副業に関わる4つのパラドックスを解説していきます。

1.労働時間パラドックス

個人は本業と副業の労働時間を自己管理していると思っています。しかし、一方で企業は個人の労働時間を労働基準法に則って管理しなければならず、その対応の難しさがジレンマとなっています。

どのような規定かというと、

・休憩時間を除いた40時間/週を超えて労働させてはならない
・休憩時間を除いた8時間/日を超えて労働させてはならない


他にも休憩時間や有給休暇、賃金、休日、安全と衛生について細かく規定されています。(労働基準法より引用)

この労働時間に関する規定は、事業場が異なる場合においても通算されます。例えば、本業で6時間働き、副業で4時間働いたとすると、4時間のうち2時間は労働時間に入ることになります。これをどちらの事業場が持ち、管理・把握するかという仕組みづくりが難しいのです。

2.成長パラドックス

個人は副業で本業に活かせる仕事をして成長したいという想いがあり、さらに、3〜4社と複数社で業務に携わればその道のプロフェッショナル人材になれると考えています。

しかし、そのような個人に対して、企業は十分な成長機会を与えているつもりであって、「本業だから社内でやってほしい」と思うのです。

3.報酬パラドックス

「なぜ副業したいのか」という問いに対して、およそ6割の人が「収入をあげたい」と回答しているようです(※)。

しかし、本業だけでは満足いく収入が得られていないと感じている個人に対して、企業は成果に対して適切な報酬を与えていると考えているのです。

4.転職パラドックス

企業には「副業をきっかけに転職されることが怖い」という本音があります。対して個人は副業先で雇用されることや、自身の市場価値を知って独立することも視野に入れながら副業しています。

パラドックスを軸に「副業」を考えてみる

労働時間パラドックスは各社共通ですが、それ以外の4つのパラドックスについては、会社によって考え方が違います。パラドックスを軸に、企業と個人がコミュニケーションを取れるかが、副業容認のポイントとなるように思います。

企業は個人の意見に耳を傾け、どこまでを留保し、どこまでを事業戦略に活かしていくかを検討してみてください。個人は会社や上司に交渉したり、相談したりする時に、自分本位ではなく、相手側に起きているパラドックスの視点を持ってコミュニケーションを進めてみましょう。

成長企業が活用する「プロ人材」の出現

企業側からすると副業解禁の流れはマイナスに捕えられがちですが、「自社を副業とする人材」のような外部人材の活用は、多くの企業にとって自社の発展につながる一手だと言えます。

弊社が手がける、雇用のコストをかけずにハイクラスな「プロ人材」を、必要な時に必要な分だけ活用するサービス「プロシェアリング」は、現在案件数が4,700件を超え、創業時から6年で急拡大を見せています。

なぜここまでの広がりを見せているのか。外部のプロ人材を活用する企業のメリットは主に3つあります。1つ目は、社内にはない専門性・知見を取り入れられること。2つ目は、経営のスピードアップを図れること。3つ目は、投資対効果が可視化されることです。

老舗菓子屋「榮太樓總本鋪」は、創業200周年を機にリブランディングを決意。広報のプロ人材が伴走し、新社是の策定や記念商品の開発、ブランドの見える化を図るための特設サイトを開設し、伝統・ストーリーを次世代に引き継ぐブランド戦略を構築することに成功しました。

榮太樓總本鋪がなぜ現代まで続いてきたのか、これまで何となく思っていたことを明確に言語化できたと経営者は語ります。

新規事業の立ち上げでプロ人材と出会い、成功確度を高めた事例もあります。

不動産の販売、賃貸、流通を行う㈱コスモスイニシアは、2016年当時、新たにホテル事業を立ち上げました。この立ち上げまでの期間限定でプロジェクトに参画したのが、ロイヤルパークタワー汐留の元社長です。

的確なアドバイスを行うプロ人材と機動力の高いプロジェクトメンバーが息を合わせ、スピーディーに事業を推進し、訪日外国人旅行者向けアパートメントホテルが無事にオープン、会社として宿泊事業を確立しました。現在までに総計1,500室ほどの計画があり、稼働も順調です。

このように、実際に多くの成長企業が正社員雇用にこだわらず外部人材の知見を活用した経営改革を始めています。

また、個人に目を向けると、現在はプロとして活躍している人材が、正社員として1社に勤めていた時代は自身の職能に自信が持てなかったという話もよく聞きます。「たまたま知り合いの相談に乗ったことが想像以上に喜ばれた」「副業で小さく始めていたらいつの間にか本業の収入を超えていた」などの事例も。

副業に関するさまざまな問題も、企業と個人それぞれが小さく始めていくことが重要ではないかと思います。

プロフィール

久保田 雅俊
1982年生まれ、静岡県出身。学生時代から複数の事業の立案を行う。21歳の時に、地元の進学塾を経営していた父親が意識不明となり、10年間に渡って父親の介護を余儀なくされる。父親が経営していた企業は継続不可能となり、自身の手で会社の清算をすることとなる。その経験から企業経営には「金」以上に「人の経験・知見」が必要であるという考えにたどり着いた。2014年㈱サーキュレーションを設立。プロフェッショナル人材の経験とスキルを複数社で活かすプラットフォーム「プロシェアリング」を運営し、2020年現在、プロフェッショナルのネットワークは1万3,000人、導入企業は1,500社を超える。副業として登録し、その後独立する人材も多数在籍。副業/複業時代の新しい働き方メディア「nomad journal」の運営も行なっている。

【参考】
(※)「副業について」エン転職調べ
榮太樓總本鋪
コスモスイニシア

株式会社サーキュレーション代表取締役 久保田 雅俊