ひと昔前は、就職活動を経て入社した企業に定年まで勤めあげる、という働き方がスタンダードであり、美徳とされていました。しかし近年、そもそもの前提であった終身雇用のシステム自体が揺らいでおり、自分自身のキャリアアップやより良い職場環境を求めて転職を選択する人も少なくない時代です。
今回は、なかでも大きな動機の一つである「年収アップ」を目指しての転職活動についてご紹介します。今まさに転職を考えているという人は、将来のキャリア形成を目指して学びたい場合に国からの支援が受けられる制度についてもあわせて見ておきましょう。
今の年収=自分の実力、とは限らない
転職するまでは踏み切らないものの、現在の年収に不満を覚えながらも「でもこれが自分の実力だから…」と考えている人は多いのではないでしょうか。
しかし、一概に「年収=現在の自分の実力」とは言い切れません。というのも、そもそも年収というのは「職種」や「業界」によって大きく左右されるためです。
分かりやすいのが、医師やパイロットといった特殊な免許が必要とされる仕事でしょう。担うことができる人が限られるため、当然、年収も高くなります。
また、金融や通信、放送、自動車といった規制産業も、事業を始めるために特別な認可が必要とされるうえ、監督官庁による厳しい指導といったいわゆる参入障壁が存在するため、そこで働く人たちの年収も高めとなっています。
一方で、宿泊業や飲食サービス業では、業種別の給与階級別分布において年収300万円以下の人が最も多いとされます。このように、個々人の年収について、そもそも平均年収が高い業界とそうでない業界や職種がある、ということを抜きにして考えることはできません。
そのため、現在の年収が低いからといって、「自分には実力がない」と判断してしまうのは早計です。業種や職種からして今以上の年収が見込めない場合に、より良い収入や職場環境を求めて転職を選択することは、前向きな姿勢と言えます。
もちろん、まずは自分の能力を現実的に見定めることが大切です。その上で、今とは別の業界や職種でのキャリアアップの可能性を見出すことができたなら、挑戦してみる価値は十分にあると言えるでしょう。