世界シェアトップをひた走る「“モノづくり日本”のカメラ」が揺れています。
キヤノンは2019年に3度の下方修正を行い、連結営業利益は前期比49.1%の減益となりました。(※1)
また、ニコンは2020年3月期の業績見通しでカメラの赤字転落を発表しています。(※2)
その主要因について、「急速な市場縮小がとまらない」とニコンの岡昌志CFOは説明しています。(※3)
その一例としてデジカメの出荷台数を見てみると、2010年のピーク時には1億2146万台でしたが、2019年には1521万台と大きく落ち込んでいます(※4)。
高い世界シェアを誇る「日本のカメラ」はこれからどうなっていくのでしょうか?
依然として高い世界シェアだが…
日本のカメラメーカー各社の利益が縮小していますが、カメラのシェアそのものは依然として高いままです。
BCN社が発表したBCN AWARD 部門別受賞企業「2020年・デジタル一眼レフ部門のシェア」はキヤノン(56.3%)、ニコン(41.1%)、リコーイメージング(2.4%)の上位3社トータル99.8%と高いシェアを誇っています。
映画に出てくる家電製品の定番は、かつては「Panasonic」や「Sony」などの日本製品ばかりでしたが、時代は流れ、今では「Samsung」なりました。しかし、今も変わらずカメラにつけられている代名詞といえば「Canon」「Nikon」です。
強力なライバル企業がカメラ市場に登場したわけではなく、カメラそのものの市場が縮小していることがこの背景にあります。といっても、人々が写真を撮らなくなったわけではありません。
カメラの市場を小さくしているもの、それはなんといってもスマートフォン(スマホ)の台頭なのです。
ライバルが他業界からやってくる時代へ
スマホの高性能化は、あらゆるビジネス業界の構図をひっくり返していきました。
筆者もかつては携帯ミュージックプレーヤーとして、カセットテープ・CD・MD・MP3と様々な媒体のプレーヤーを持ち歩いていましたが、それらの機能はすべてスマホに集約されてしまいました。
かつては20-30万円していたカーナビも従来ほど売れなくなってしまい、今ではスマホやタブレットのカーナビアプリを使う人が増えています。地図の更新料も必要なく、音声操作もできるなどの点が評価されています。今後はスマホの進化やウェアラブルデバイスの拡充で、歩数計などの健康グッズも脅かされかねません。
かつてはスマホのカメラといえば、暗がりではよく見えず、画質もよくありませんでした。しかし、最近は飛躍的に性能が向上しており、夜間モードや4K撮影にも対応しています。
産業のシェアそのものをなくしてしまう、そんなライバルが同業他社ではなく、他業界からやってくる時代になったのです。今回の事例で言えば、カメラメーカーのライバルがスマホという思わぬ伏兵だったわけです。
個人用デジカメから、業務用カメラへ
キヤノンによると、「医療機器や監視カメラの事業は堅調」とのことで、新商品の投入も検討されているようです。個人用のデジカメでなく、業務用のカメラであればすぐさまスマホが代替する予定はありませんから、カメラメーカーのドル箱は「個人用デジカメ」から「業務用カメラ」へと変わる可能性があると感じます。
個人用デジカメで苦戦するキヤノン、ニコンを尻目に、同じカメラでも「内視鏡」は堅調です。オリンパス、富士フイルム、ペンタックスの3社で世界シェアの9割以上を占めています。その内、7割をオリンパスが占めていますが、シェアの高さだけでなく売上高もここ数年堅調そのものです。
医療用のカメラは個人撮影を楽しむデジカメと異なり、医療の現場での使用に特化したカメラです。日の丸カメラメーカー勢がこれまで培った技術ノウハウや経験など、強みを発揮できる分野ですから、現在の優位性のある構図は、少なくとも今すぐには変わらないのではないでしょうか。
かつては日本のお家芸とされた「家庭用ゲーム」も海外勢にシェアを奪われています。残された数少ない砦をどこまで守ることができるのか?日本企業の手腕が問われます。
【参考】
(※1)「2019年12月期決算概要」キヤノン
(※2)「2020年3⽉期 第3四半期決算報告」ニコン
(※3)「ニコン、通期は映像事業が低調も、その他事業で挽回し増益を確保 今期は減収減益の見通し」LIMO
(※4)「デジタルスチルカメラ生産出荷実績表」(カメラ映像機器工業会統計)2019年年間実績表(1~12月累計)
「2020年 BCN AWARD 部門別受賞企業」BCN社
高級フルーツギフトショップ「水菓子 肥後庵」代表 黒坂 岳央