2020年1月22日に経済同友会が政策提言「「日本版ライドシェア」の速やかな実現を求める-タクシー事業者による一般ドライバーの限定活用-」(※1)を発表しました。
「高齢者による免許の自主返納」「訪日外国人観光客数の増加」を背景に、タクシーの需要が高まる一方で、運転手の高齢化によりタクシードライバー数は減少傾向にあり、今後タクシーの需給がさらにひっ迫することが見込まれます。
そこで、経済同友会は現行ではタクシー事業を営むにあたって「第二種運転免許証」と「タクシー事業用として登録された車両」が必要な制度について、「タクシー事業者の運用・管理のもと、通常の運転免許証と自家用車を持っているドライバーならタクシー事業を認める方針」への変更を提言しました。
この政策提言により、一般ドライバーの一般車両によるタクシー営業、いわゆる「白タク」の合法化が実現する可能性があります。
また2月4日には、日本交通ホールディングス㈱と㈱ディー・エヌ・エーがタクシー配車アプリ等に関する事業を統合することに合意、その後21日にはアメリカの配車大手のウーバーのCEO、ダラ・コスロシャヒ氏がNHKのインタビューで「東京オリンピック・パラリンピックの開催を見据えて、東京でタクシー会社との提携を目指している」ことを明らかにしています(※2)。
配車サービスの競争激化と「日本版ライドシェア」は、どのように交わり、影響を与えながら発展していくのでしょうか。
「日本版ライドシェア」海外との違いは?
経済同友会が提言した「日本版ライドシェア」は、日本に先行してライドシェアサービスが導入されている国・地域で表面化した「課題・問題点」を未然に防ぐ対策が施されています。
例えば、米国ニューヨーク市では、2015 年には1万2,500人だったライドシェアサービスのドライバーが2018年7月時点で8万人に激増し、交通渋滞や低賃金のドライバーを生み出しました。
以上を踏まえ、「日本版ライドシェア」では供給過多とならないよう「①都心部においては一時的にタクシー需要が増大する通勤時間帯(例:午前7~9時)に限り、②恒常的にタクシーの供給が不足している地方都市等において」との様に、地域や時間帯に限定してライドシェア事業を解禁すべきと主張しています。
また、中国では急速にライドシェアサービスが普及したことから、いち早く法規制が行われましたが、2018年に「滴滴出行(ディディチューシン)」のライドシェアサービス「順風車(ヒッチ)」利用客がドライバーに殺害される事件が発生するなど、事業者のずさんな安全対策の実態が明らかになりました。このことを契機に規制が厳格化されてしまいました(※3)。
一方で「日本版ライドシェア」では、タクシー事業者がドライバーの研修・検査および車両の点検・管理等に責任を持つことで、より安心・安全な運用を実現しやすくします。
さらに、「日本版ライドシェア」では原則として「タクシー配車アプリ」を活用し、ドライバーと利用者による相互評価制度や顔認証制度を設けることで安心・安全の担保を図り、また運行データを利用して観光客等の潜在ニーズを発掘し地域の活性化につなげるとともに、技術革新や新たなビジネスモデルに即したルールづくりを目指します。
「中長距離相乗りマッチングサービス」との違いは?
タクシー事業者ではない運転手にお金を払って目的地に連れて行ってもらう「白タク」行為は違法です。しかし、相乗りを前提とした「notteko」や「GO RIDE」などの「中長距離相乗りマッチングサービス」は、すでに国内にもいくかあります。
「中長距離相乗りマッチングサービス」はあくまでも「目的地が同じ人のマッチングサービス」であり、「相乗りする人はドライバーへ料金を払うのではなく、ガソリン代などを割り勘で負担する」ということを建前としている点が、運転手に明確な料金を支払う形態の「日本版ライドシェア」とは異なります。
実現するなら2020年通常国会がカギ?
2017年から「グレーゾーン解消制度」により明確に合法となった「中長距離相乗りマッチングサービス」ですが(※4)、当時は「安全性に問題がある」との理由からタクシー業界で大反発が起こりました。
ただし、今回提言された「日本版ライドシェア」は、ドライバーをタクシー事業者が管理・運用することが前提であるため、タクシー業界から大きな批判が起こる可能性は低いでしょう。
政府は、2020年の通常国会において、タクシー事業者等が自家用有償旅客運送を受託あるいは実施主体に参画する場合の法制を整備しようとしています。経済同友会は、「今度こそ、真に利用者本位の制度とすべきである」と政策提言で主張しており、「日本版ライドシェア」が実現するか否かは2020年の国会がカギを握っていると言えます。
タクシードライバー不足の解消やタクシー利用者にとっての利便性の改善、さらに副業の幅が広がる可能性を秘めた「日本版ライドシェア」ですが、本当に実現するのでしょうか?
今後の政府の動きが注目されます。
【参考】
(※1)「「日本版ライドシェア」の速やかな実現を求める-タクシー事業者による一般ドライバーの限定活用-」経済同友会
(※2)「米配車大手ウーバー 五輪見据え東京でタクシー会社と提携協議」NHK NEWS WEB
(※3)「中国版ウーバー「滴滴」、急成長するも規制強化で「タクシー会社」に逆戻りか」ダイヤモンドオンライン
(※4)「中長距離相乗りマッチングサービスに関わる道路運送法の取り扱いが明確になりました~産業競争力強化法の「グレーゾーン解消制度」の活用~」経済産業省