この夫妻も離婚せずに添い遂げ、定年退職後、夫は外泊しなくなりました。人づきあいの機会がなくなり、相談事を持ち込まれることもなくなったためでしょう。夫の外泊がなくなってからの妻は、以前とは別人のように穏やかになっていました。

たかがお金、されどお金

夫に不満のある妻は珍しくありません。夫に不満を持ちつつ、よき妻になろうと努力する妻もたくさん知っています。

しかし、その結果、不満が消えたという話はまず耳にしません。自分の性格すら思い通りにならないのに、夫といえども他人の性格を思い通りにするのは至難の業ということでしょう。

ならば無駄な努力はちょっとだけにして、あとは自分を変えるほうに努力するのが賢明かなと考えてしまいます。一番目の妻は、妻の部分はさっさと切り捨て、母親としての役目に徹しました。子どもたちはいずれも社会的地位を得、家庭も円満です。

二番目の妻は、娘の自殺未遂だけでなく、息子ものちに妻との不仲で離婚しています。父親の不在で精神的な支柱を失った子どものことを考えると、せめて母親だけでもドーンと構えていたら、と思ってしまいます。

ところで二組のご夫妻とも、離婚はしていません。夫の共通点は、妻に渡すお金には一切手をつけていないことです。司法統計では、妻からの離婚原因の第2位が「生活費を渡さない」となっています(16年)。たかがお金、されどお金ですね。

間宮 書子