仕事でも同じではないかと思われます。「仕事なんだからやれよ」「キミのために言っているんだよ」と上から目線で言われても仕事をしようと思えないはずです。それよりも「やってくれるとうれしいなあ」「助かったよ」と言われる方がその気になれるのではないでしょうか。

冷静さがなくなると怒ることのみに意識が行き本来の目的を見失ってしまいがち。そうではなく目的は子供に何か行動してもらうことですから、どうすればその気になれるかを落ち着いて考えていきましょう。そこでやってくれたらこっちのもの。子供の目を見ながら考えるのもいいですね。

そして大切なのは、決して「すぐに言うことを聞かせよう」「何が何でも直させよう」と思わないこと。子供は何をするにも時間がかかるしすぐに言うことは聞きません。だけど、いったん納得すればびっくりするような変化を見せます。心身の成長とともに良くなるところもたくさんあります。個人差もありますが、子供の変化を楽しみにしながら待つ姿勢も必要ではないでしょうか。

おわりに

昔の生徒に信じられない変化を見せた子がいました。低学年のときから勉強嫌いで日本語そのものもなかなか通じない子供でした。積極的になることなく高校受験も終えました。

ところが、高校に入ってふとしたときから勉強するようになり成績も常にトップ、最終的に都内の某有名私大に進学したのです。特別なことは何もしていません。ただ、無理強いは避けていつもどおりのことを続けました。簡単なコミュニケーションを取るのにも大変だった幼い頃を知っていますから、その大学に入ったなんて今でも信じられない思いです。

その子の母親もかつては怒って勉強をさせようとした時期はあったようです。だけど、高校生になってからは帰宅後すぐに勉強をするようになったようで、その姿をみて「かえって気持ち悪い」とも言われていました。

もちろん学歴が人生のすべてではありませんが、誰もが想像できないような可能性を人間は秘めています。まずは家族の信頼関係を最優先に子供の変化をエンジョイしてはいかがでしょうか。

久枝 壮一郎