昨年の中国の経済成長率が6.1%と発表され、「低成長」と言われています。また、今年は新型肺炎などの影響で6%を大きく割り込みそうだと言われて話題になっています。日本より遥かに高い成長率なのに、なぜでしょうか。今回は、その理由を久留米大学商学部の塚崎公義教授が解説します。

日本は1%成長でも労働力不足なのに

バブル崩壊後の長期低迷期、日本はゼロ成長で失業に悩んでいました。「6%成長できたら失業問題が解決するのに」と思っていましたが、需要が不足していたので、そのような高い成長率は望めませんでした。

今の日本は一転して、1%程度の経済成長率なのに労働力不足です。仮に需要が6%増えたとして、6%成長しようと思っても、労働力不足が制約要因となって到底不可能でしょう。

経済成長は、需要と供給がバランスよく伸びないと、低い方に制約されてしまうわけですね。

ちなみに、生産可能量の伸び(=供給可能量の伸び)は、人口増加率や技術進歩率などで概ね決まるので、比較的安定しています。これを「潜在成長率」と呼びます。

需要が潜在成長率と同じだけ伸びれば、バランスの良い成長となります。需要がそれ以上に伸びると労働力不足やインフレになり、需要の伸びがそれ以下だと不況になります。

バブル崩壊後の長期低迷期に失業が問題だったのは、需要の伸びが潜在成長率よりも低かったからで、今は労働力不足が問題となっているのは、需要が潜在成長率以上に伸びているから、と考えて良いでしょう。