危機の予兆があれば個人で判断・行動すべきか
ビジネスで日本人はリスクを避ける傾向が強いなどと言われることがありますが、長年、アジアで生活・仕事をしてきた経験上、華人・印僑などと比べ、日本人はリスクから逃げるという行動がとれない印象があります。
環球時報などによれば、武漢市長は1月26日の記者会見で春節前(封鎖前)に500万人が市外へ出たことを明かしました。ここには出稼ぎ労働者などの流動人口が含まれると見られますが、それにしても武漢市の人口が1,100万人ですから、かなり多くの方々がこの短期間に脱出したことになります。
一方、武漢の空港が封鎖される前に脱出した日本人は少ないようで、600人超が武漢に取り残されました。所属会社の決定というのは、目先の経済損失を恐れ、あるいは、外務省の海外安全情報などのお墨付きがなければできない等で遅れがちですが、緊急時に日本人はなぜ個人で判断できないのでしょうか。今回は政府が1月29日からチャーター機を飛ばしてくれたので助かりましたが…。
やはり日本人は危機対応には弱いようです。基本的には、個々人が現地情報を収集・分析し、迅速に判断・行動するべきでしょう。たとえ組織人であっても、「リスク」が高まっているという段階から、「危機」の兆しを察知したら、所属組織や政府に頼らずとも本能的に判断・行動すべき時もあり得るでしょう。
リスク回避傾向が強い日本人がなぜ逃げない?
巷で日本人ビジネスマンはリスク回避傾向が強いと言われているのに、なぜ危機の予兆があっても逃げようとしないのでしょうか。
理由の一つは、リスク(事象が発生することによる予想被害 x 発生確率)に対する過小評価です。特に、その発生確率を低いとみなしてしまうことがあります。認知バイアスの一種である「楽観主義バイアス」(悪いことは自分には起きないと考える傾向)が強いのかもしれません。
事象が発生することによる予想被害については、情報収集が不足して現状認識ができないという可能性があります。たとえば、重要な現地情報をくれる人的ネットワークを日頃から構築していないということです。現地語ができるわけではないのなら、なおさら必要なものであるのに、です。