その他、「現状維持バイアス」と言われる、何も問題が出なければとりあえず現状維持を望む傾向、単独行動を許さない日本的な群衆心理、日本本社からの指示をひたすら待って責任転嫁したいという心理などもあるのかもしれません。

また、仮に目の前の危機を正確に認知できたとしても、日頃から危機を想定していない、あるいは組織の場合はマニュアル化していないために、必要な行動を起こすまでに時間がかかるといった面もあるかもしれません。

ミャンマー出張時の地震体験を通じて

私は東京拠点で頻繁に海外出張している時期に、SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)のために海外出張できないで困ったことはありますが、幸いにも海外滞在中に危機に遭ったことはありません。

ただ、以前、ミャンマー出張中に地震にあったことがあります。仕事でヤンゴンからマンダレーへ向かう国内便に搭乗していたときに、マンダレーの北方を発信源とするマグニチュード(M)6.8の地震が発生し、13人が死亡、40人が病院に搬送されました。

マンダレーの宿泊先はミニホテルだったのですが、チェックイン後、2階の部屋の中で強い揺れを感じ、慌てて外に飛び出しました。ホテル玄関前の駐車場には、多くの宿泊者が飛び出していました。翌日、最も被害が大きかった震源地サガインへ車で移動して企業訪問を予定していました。

日本人とミャンマー人で計10人ほどのプロジェクトチームでしたが、プロジェクトリーダーは大丈夫だと言い、私は大丈夫じゃないと言い、チームが2つに分かれました。被害状況(サガインの道路が破断されている等)や余震見込みに関する情報が乏しかったため、どちらの見解にも根拠はありませんでした。

リーダーらは予定通り、予約済のミニホテルに泊まり、翌日、サガインへ車で移動しました。一方、私と私の意見に賛成した2人は、急遽、地震で倒壊しなさそうなマンダレーの最高級ホテルに移り、クライアントに連絡し、翌日には空路でヤンゴンへ戻りました。