こういったデモや暴動は、イランやチリだけでなく、去年も香港やフランス、イラクやレバノンなど各地で発生し、現在も続いている。

そして、今後アジアやアフリカの発展途上国を中心に人口が激増するなか、現地ではそれに見合うだけの雇用が生まれるのだろうか。実際、それは極めて困難で、地球温暖化や資源獲得競争も影響し、労働環境の悪化がデモや暴動、テロをさらに誘発してしまう恐れがある。

労働環境の悪化が安全保障上の脅威に

現在、トランプ政権に象徴されるように、世界では国際協調主義や大国のリーダーシップというものは陰を薄め、自国第一主義が色濃くなっている。COP21における米中の対応もそうだろうし、労働環境の悪化というものが安全保障上の脅威になってしまうことが懸念される。

今後、ILOの報告書はどんな内容になっていくのだろうか。労働環境悪化によるデモや暴動、テロは、現地に滞在する駐在員や出張者にとっても身近なリスクである。今後いっそう、労働環境と安全との関係性を注視していく必要があろう。

和田 大樹